カランカランと店のドアのベルが鳴った。「いらっしゃいませ」と声をかけるとそこには常連客であるリノンという少女がいた。

「いらっしゃい、リノンちゃん」
「お久しぶりですミノリさん」
「久しぶり。あたし今から上がるところだから相席してもいい?」
「全然構いませんよ。その方が明菓も喜ぶだろうし」

リノンは16とは思えないその大人っぽい顔で微笑んだ。本当に年下かと疑いたくなる時がある。そして明菓とは彼女の手持ちである幼い雄のジュペッタだ。この子は何故かミノリによく懐いているのだ。今もリノンの肩にのっている。

「じゃあちょっと待ってて。急いで着替えてくる」
「ペター!」

明菓がいってらっしゃいと言うように手を振った。



***



「ただいまー。遅くなってごめんね」
「いえ、大丈夫ですよ」

戻ってくるとリノンの膝上に座った明菓がパフェをつついており、彼女の右隣の椅子に芳茉という名前の雄のランクルスがジャスミンティーを飲んでいた。

「リノンちゃんまだ注文してないよね」
「ええ。ミノリさんが戻ってくるのを待つつもりだったので」
「うわーごめんね、待たせちゃって」
「いえ、大丈夫ですよ。それに私はもう決めてあるので」

どうぞ、と渡されたメニューを受け取る。自分の働いている店だから一応メニューは覚えているのだが、やはり見て比べたい。

「あーどうしよー。パフェも食べたいけど太っちゃうし…。でもなあ…」
「良ければ割勘しません?」
「え、いいの!?」
「ミノリさんさえよろしければ。私も久々にここのパフェ食べたいですし」
「じゃあお願いします!てんちょー!!」

やったーと年甲斐もなく(まだ18だけどね)喜んで、たまたまフロアに出ていた店長に注文をした。

「そういえばミノリさんって彼氏いるんですか?」
「え!?」

いきなりの質問にあたしは驚いた。

「ぇ、いきな、りなんで」
「あの、いや、そんなに動揺しないでください…」

噛み噛みのあたしに彼女は若干びびっている。

「ライモンの遊園地のペアチケットを知り合いから貰ったんですよ。でも私は遊園地はあまり好きじゃないですし行く相手もいないので誰か貰ってくれる人探しているんですよ」
「それであたしに彼氏いないか聞いたと」
「はい。もしいるならデートにでもと。いなくても誰か行く相手がいたら貰っていただけるとありがたいんですが…。ちなみに期限は1ヶ月後までです」
「う〜ん…。相手って言ってもなあ……あ、いた」

そういえばいたじゃん、遊園地に付き合ってくれそうな人たちが。

「ちょっと電話して確認したいから席はずしていい?」
「どうぞ」

店の外まで出るのは面倒なのでスタッフルームに駆け込む。ライブキャスターを取り出してあたしは幼馴染みに電話を掛けた。

「あ、ポッド出た。今大丈夫?」
「ああ。何か用か?」
「うん、ちょっと。あたしの知り合いの子がさ、ライモンの遊園地のペアチケットくれるんだって。有効期限は1ヶ月後まで。だから一緒にいかない?」
「あー…ちょっと待って」

デントー、コーン、と遠くでポッドが二人を呼ぶ声がする。恐らくジムの日程を確認しているのだろう。
ややあって、ポッドは電話に戻った。

「いきなりだけど明日なら空いてる」
「本当?じゃあ明日行こう!」
「時間とかは後ででいいかよ?」
「うん。もうバイトも終わったし、後でお母さんのフーディン借りてそっち行くよ」
「了解。来るとき一応連絡しろよ」
「はいはい、わかってます」

ライブキャスターを切り、あたしはスタッフルームからでる。もう注文した品は来ていてリノンは手持ちの世話をしながら紅茶を飲んでいた。

「リノンちゃん、確認したら行けるみたいだからチケットください」
「はい、どうぞ。ありがとうございます」
「いえいえ」



―――――



「デートのお誘いでしたか?」
「うっせ」
「ミノリだろ?」
「黙れっての」
「全く、ポッドはミノリのこととなると素直じゃありませんね」
「コーンお前まじで黙れ」



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