「………迷った」

私、ミノリはヤグルマの森の奥深くでぼっち状態になりましたはい。何故こんなことになったかと言うと、久々に森林浴と言って森に来たけど、珍しく木の実がなっているのを見つけてあれもこれもととっていたからです。完全にやらかしました。

「バオップもゾロアも家だしなあ…」

私の可愛い可愛いバオップとゾロアは家で母のムーランドのむーさん(睦美だからむーさん)に遊んでもらっていたので置いてきたのだ。こんなことだったら無理矢理つれてこればよかった…。
どうしよっかな、と考えながら木の根本に座り込むと突然背後から声をかけられた。

「どうなさいました?」
「はい?」

その声の方向に振り替えると、ライトグリーンの髪のお兄さんが立っていた。お兄さんは穏やかな表情を浮かべている。

「すみません、突然声をかけて。ただ、お困りのようでしたので」

お兄さんは少し眉を下げて笑った。

「あ、ちょっと迷子になっちゃって」

この年で迷子など恥ずかしすぎるが素直に告げる。こんな森の中で声をかけてくれる人なら力になってくれるかもしれないし。

「迷子、ですか」
「はい」
「この森は奥にいけば行くほど複雑ですからね。私でよければお送りしますよ」

また、お兄さんはふわりと笑った。よく笑う人なんだな、と思う。いい人だな、とも。

「じゃあお言葉に甘えて」

私は立ち上がって服についた木の葉を払う。お兄さんは私の支度が整うのを確認してから歩き出した。

「家はどちらの方面で?」
「シッポウシティです」
「いいところですよね、シッポウシティは」
「はい、私もシッポウは好きです」

全くの初対面、全然知らない人ではあるが自分の住む街を好きだと言ってもらえるのは嬉しい。

「ヒウンを否定するつもりはありませんが自分は自然に囲まれる方が好きでして」

お兄さんはそう言って苦笑いした。

「そういえばお兄さんはどこに住んでいらっしゃるんですか」
「私、ですか」

お兄さんはキョトンとした。自分のことを聞かれると思っていなかったらしい。

「私でしたら先程あなたが座っていらっしゃったところより少し奥に住んでいますよ」
「生活に困ったりしないんですか?」
「野生のポケモンで力を貸してくれる者もいます。それに自分が好きな環境ですから。……この辺で構いませんか?」
「え?あ、もう着いたんだ。ありがとうございました」

ペコリと頭を下げればお兄さんは手を振った。

「困っている人を助けることは当然の事ですから」
「いえ、本当に助かりました。えーと…」
「…ああ、私は千里と申します」
「ありがとうございました、千里さん」
「いいえ。それではお気をつけて」



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