「千里さーん。水道直りましたよ。電気も通りました」
「お疲れさまです。早姫葉さんでしたか?今紅茶を入れますので」
「おっ、ありがとうございます!」

例の件の後、とりあえず千里さんの家を修理しようということになった。それでいろんな人のツテを使ってギアステーションに勤めている早姫葉ちゃんに手伝ってもらうことになったのだ。早姫葉ちゃんは「恩人の恋人の知り合いだからタダでいいですよ!」なんていってくれた。でもやっぱりそれは申し訳ないのでお金を渡そうとしたら全力で拒否された。さらに強要しようとしたら相棒のギガイアスを出されてバトルになるところだったので諦めた。だから代わりにケーキを出すことにしたのだ。

「電気いじったりしただけなのにこんな美味しいケーキ出してもらっちゃって…。本当ありがとうございます」
「いえ、こちらこそありがとうございます」

帰り際、早姫葉ちゃんは困ったことがあったらまた呼んでくれといった。本当にいい子だ。

「お疲れさまです、ミノリ」
「いや、あたしは早姫葉ちゃんの手伝いをしただけなんで」

早姫葉ちゃんが帰ってから二人でゆっくりティータイム。あたらしくスコーンを出した。

「やっぱりいいですね」
「何がです?」
「こうして貴女とのんびりできるのが、です」

千里さんはくすりと笑って紅茶を飲む。

「なんかキャラ変わりましたね」
「そうですか?」
「だってあのときは…」
「黒歴史なんでやめてください」
「……とにかくそんな恥ずかしい台詞言わなかったと思います」

千里さんはひく、と顔をひきつらせた。知らない、あたしのせいじゃないもん。すーっとそっぽを向こうとすると誰かに服の裾を引っ張られた。見ると擬人化した手持ちたちがそこにいた。

「ね、ミノリちゃん。遊ぼう?」
「ミノリは千里とばっか喋ってるからつまんない」
「ミノリはあたしたちのトレーナーなんだからね!」

順に晴、万里、花音だ。

「ミノリは私の恋人でもありますから」

千里さんは幼い三匹を容赦なく睨み付ける。あたしはこの人たちの板挟みになって大変だ。けれど、満更ではない。

「家帰ったら一緒に遊ぼうね。今はお菓子食べよう?」
「…お菓子!」

最初に花音が反応してそこからは連鎖だ。みんな行儀よく席についてお菓子を食べ始めた。

「いいですね、こういうの」
「私はミノリだけでいいんですが」
「この子達がいなくなったら、私泣きますよ?」
「…そんなこと言われたら何もできないじゃないですか」

むすっと千里さんは拗ねたような表情を見せる。あたしがそれを笑うと千里さんも眉を下げて仕方ないというように笑った。


ああ、本当に、本当に幸せだ。



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