「そこ、動き悪いよ!!ほら、だらけない」
立海大附属中学男子テニス部。
王者立海と呼ばれ、その練習量は半端ではなく、今日も朝から激しい練習が行われていた。
そんなテニス部の様子をみている影が一つ。
「精市、頑張ってるなぁ」
そう嬉しそうに微笑むのはテニス部部長幸村精市の彼女、黒柳渚。
彼女は彼氏である幸村の練習姿をみたいのだが、フェンス近づくことができない。コートを取り巻くファンがいるし、そして何より自分が様子を見に行って練習の邪魔になるのが嫌だった。
だから
「やっぱり木の上はいいね。バレないし見やすいし」
とフェンスに近い木にこっそり上って練習を観察していた。
「みんな、頑張ってるな〜」
足をぶらつかせ、のんびりしているとメールが届いた。
「誰だろ?」
画面を開くと『幸村』の文字が。
彼氏になる前から登録してあったこのアドレスは、彼氏となった今でも変えずにそのままである。
「え・・・精市!?」
今は部活に勤しんでいるはずの彼氏からのメール。
急いで開くと
『今すぐ木から降りて』
と短いくて驚く内容。
なぜ幸村が私が木に上っていることを知っているのか。
コートを見渡したが、幸村は居らず、かわりにしたから声がした。
「渚、いるんだろ?早く降りて来なよ」
見下ろせばこちらを見上げ微笑む幸村がいた。
「精市・・・何でわかったの?」
木に登るというアイデアはばれるとは思っていなかったので少し悔しく思いながらゆっくり木を下りつつ訊ねる。
「俺に渚のことで分からないことがあると思う?」
ふふ、と意地悪く笑う幸村に綺麗だと思ったのは内緒だ。
「バレないと思ったのに・・・」
「残念だったね」
ぽんぽんと頭を撫でられる。
なんだか、落ち着く。
「そんなに練習見たかったら言ってくれればよかったのに」
「だって、邪魔したくなかったし」
「邪魔な訳ないだろう?俺としては木に登られる方が心配でテニスに集中できない」
「・・・ごめん」
渚がしゅんとすると幸村は苦笑して手を引っ張った。
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