「精市?」
「練習見たいんだろ?おいで」
強い力で腕を引っ張られ、小走りでついていく。
―――
―――――
「ここ座って」
肩を上から押されて座ったのはコート内にあるベンチ。
「せ、精市…」
「ん?どうした?」
「なんかファンクラブの人に睨み殺されそうなんだけど…」
外からは「なにあの子?」「なんで幸村君といるの?」「対して可愛くもないくせに…」と嫌悪を含んだ様々な声が聞こえる。
「あぁ、そんなこと?…ちょっとこっち来て」
「へ?」
今度はフェンスのほうへと引っ張られ、何故かいきなり真正面から抱きしめられた。
後ろからはファンクラブの皆さんの凄い悲鳴(奇声?)が聞こえる。
「みんなに言うけどこいつ、俺の彼女だから。こいつに手を出したら女でも容赦しないよ」
きっと今、精市無表情だな。
怒るとき絶対表情なくなるし。
なんて呑気なことを考えてたら周りは凄いしん、としていた。
「??」
「ほら渚、行くよ」
「え、ちょっ、待って!!」
いきなり体を離され周りの状況を聞こうとしたらその前にまた強い力で引っ張られた。
そして辿りついたのは再びコート内のベンチの前。
「ここからなら木の上からよりよく見えるからね」
精市はまた悪戯っぽく微笑んだ。
「俺のかっこいいプレイ、ちゃんと見ててよ?」
「あ、うん」
結局聞きたいことは聞けなかったけど、まぁいっか。
ちょっと強引だけどそれも含めてあいつのいいところだよね。
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