学校を出てからバス停まで歩き、バスに乗る。
誰一人として口を開かなかった。
霊力のある者故、これからの苦難が分かってしまう。
そしてその苦難は自分たちではなく無力な仲間を襲うことも。


皆、末梨以外は辛そうな表情をしていた。
末梨はそんな表情を見て申し訳なくなった。

きっと仲間を巻き込んだのはあたしが原因だ。
あいつは、あたしを狙っている。

そう思うと自分が悲しむことはできない気がする。


ぐるぐるとマイナスな思考を巡らせているうちにバスは病院に着いた。
ここでも口を開かないままバスを降りる。



「じゃあ、行こっか」



末梨の言葉に誰も返事をしない。
返事がないだろうとは思っていたが反応が無いのは悲しい。

もう今となっては見慣れた病院の受付を通り過ぎ、階段を上がる。
幸村の病室前に着くのは早かった。
なんでこんな時ばかり時間が早く流れるのだろうか。
本当に嫌になってきた。



「幸村、入るよ」


「どうぞ」



ゆっくりとドアを開ければいつも通り、顔が少し青白い幸村が微笑んでいたが、末梨の後ろの3人の存在に気づき少しばかり驚いたようだった。
だが、すぐに目を細めて再び微笑んだ。



「ごめん、いきなり呼んだりして」


「いいよ、別に。それにいきなりじゃないでしょ」



2日前には呼んでたじゃん、と言えばそうだったっけ?と笑って返してきた。
少し、和む。



「で、3人はどうしたの?今はまだ部活の時間だと思うけど?」



例の魔王様フェイスでにっこりと柳たちを睨む。
でも3人は動じない。
いや、動じることができない。
幸村の黒さなど比べ物にならないショックを受けているのだ。
幸村も何かあったと気がついたようで、真顔で末梨に尋ねた。










「何が、あったのですか。姫様」







「「「!?」」」」



幸村のセリフに察しのいい3人は末梨のほうに向きなおった。
末梨はそれを一瞥すると幸村をみて不敵に笑った。



「いきなり姫様呼びか、精市。挨拶が先だろう」



そういうと幸村はフッと笑った。



「お久しぶりです、末梨姫様」


「あぁ、久しぶりだな。精市」



柳は思い出した。
仁王は懐かしんだ。
柳生は察した。



日生末梨は尸・魂界の名家の姫君、月深末梨の生まれ変わりであるということを。


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