虚は案外早く片付き、何処にも被害は出なかった。
誰かが怪我をするということもなく、みんな無事だった。
校舎にいるであろう先生たちにも何も気づかれなかった。


でも、このままの練習続行は不可能だと判断したあたしと蓮はみんなを部室に集めた。


きっとみんなこの前の事を思い出している。
そして、さっきの戦いをすべて見ている。
だからもう言い逃れすることはできない。
全てを話すしかないんだ。



みんなを傷つけること、苦しめることになっても




―――
―――――



「なぁ、日生。さっきのはなんだったんだ」



部室に入ったらブン太があたしに声をかけた。
いつもよりとても弱い声だった。



「柳も仁王も柳生も、全部知ってるんだろぃ!?俺達さ、この前の事も全部思い出したんだよ。さっきのことも全部見てたんだ。なぁ、なんだよあのバケモノ。なんでお前らはあんなのと普通に戦ってたんだよ。全部、教えてくれ!!」



悲痛な叫びはブン太以外の3人の気持ちでもあった。

でも、今はそれに応えられない。



「ごめん、今は教えられない」


「なんでっすか!?」



次に叫んだのは赤也。
霊力を持っていなかった4人のなかでも一番の被害者だ。
事の詳細を一番知りたがっているだろう。



「今は、駄目なんだよ。今は…」



あたしが意味深に言えばブン太も赤也も何かあると悟ったようで渋々黙った。
でも真実を知りたい気持ちは変わらないだろう。
ちゃんと、教えなきゃ。



「…明日、うちに来て。全部、話す」


「待て、末梨」



あたしの言葉に反応したのは蓮だった。
みんなをあたしの家に連れてくるということは、そこであたしが何をするのかを察したのだろう。



「…何?」


「いいのか。お前の家に呼ぶということは…」


「もう隠し事はできないんだよ。それに、対抗する術も身につけてもらわないと。毎回虚が襲いに来るたびにあたしが助けるわけにはいかない」



そう言えば蓮は悲しそうに眉をひそめた。
仁王も柳生も意味がわかったようで辛そうにしている。



「明日の朝10時にあたしの家に来て。場所は蓮の家の隣。かなり大きい純和風の邸宅だ。多分見れば一発で分かる」



そう言ってあたしは荷物を持った。



「日生、帰るんか?」


「もう部活出来ないでしょ。幸村のとこにも行かなきゃいけないからあたしはもう行くわ」


「んじゃ俺も行くぜよ」


「…私もご一緒させてください」


「…俺も行こう」



結局霊力を持っていた全員が付いてくることになった。
まぁそっちの方が好都合だからいいんだけど。



「…じゃあ、あたしらは行くわ」




あとは宜しく、と真田に告げ部室を出た。





next









()
- 43 -


prev|next


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -