それから長い間、ポイントを取ったり取られたりしながら打ち合った。
霊圧も周りに影響がない程度に調節し、本気に近い状態だった。
久々に思いっきりテニスができるのは楽しくてはしゃいだ。









でも、これがいけなかったんだ










「・・・!?」



すっと身をかすめた悪寒にあたしは気を取られボールを見逃してしまった。
仁王ばさっきの事があったからかすごく機嫌悪そうな顔で睨んでいる。
でも、今はそんなこと気にしてられない。

先日の虚の件が頭をよぎる。

辺りを見渡し、霊圧を探る。
仁王もあたしの動作に違和感を覚えたらしく、ネットを飛び越えてこちらに走ってきた。



「どうしたん?」



仁王はなんとなく悟っているようだ。
確認ついでにという感じがする。



「悪寒がした。虚かもしれない」



淡々とした口調で答える。
予想通りの返答だったようで、仁王は無表情で虚を探し始めた。



「おった」



仁王はすぐに見つけたようでぼそっとつぶやくように言った。
校舎の屋上を睨んでいる。



「・・・でかいね」


「しかも2体」


「あたし、今日義魂丸持ってくんの忘れた・・・」


「俺は持っとらんし。霊体じゃなくて肉体で戦闘せないかんのじゃけど」


「二人じゃキツいよね」


「柳生、呼ぶんか?」



仁王は若干顔を引きつらせながらあたしに視線を投げかけてくる。
どうしよっかな・・・
戦闘するなら屋上にいかないとダメだし
あたしが抜けるのはいいとして、レギュラーが二人も抜けるのはちょっとマズいだろうし・・・



「仁王、日生。サボるな、たるんどる!!」



とりあえず霊圧を押さえようと言おうとした矢先に真田に怒鳴られた。
あたしははーいと緩く返事をしたが、仁王は勘に触ったらしい。
横で霊圧が上がるのを感じた。



「こっちは真剣に物事考えとるっちゅーに、あの老け顔は・・・!!」


「仁王、こらえて。あんま霊圧上げると虚が――」



《ヴオオォォォ!!》



虚の一体が仁王の霊圧に反応して屋上から飛び出した。



「・・・仁王?」


「スミマセンデシタ」



魔王様フェイス(最近よく使う気が)でにっこりと仁王を睨めば、固まってしまった。

あ、やばい。
虚が来ちゃう



「破道の三十三蒼火墜!!」


「なっ!?」



隣で固まっていた仁王を放置し、容赦無く虚に鬼道を放った。
声が相当大きかったようで、レギュラー全員の視線が集まる。



「日生!!何をやっている」


「うっさい、老け顔。あんたらには関係ない!!」



いちいち怒鳴る真田が鬱陶しくて怒鳴り返したら老け顔はショックだったのかへこんでいた。
蓮が仕方なさそうに励ましに行った。



「何いきなり鬼道かましとるんじゃ!?」



声のする方向に顔を上げれば仁王が顔をしかめた。



「只の人間を巻き込むなんぞ危険すぎる」


「でも今はさっさと片付けないともっと危険だよ?」



ていうか仁王が霊圧上げたのがいけないんだからね。

ぐちぐち言ってないで刀抜け、と霊圧を上げながら言えば、顔を青くして諦めたようにため息をついた。



「解放するんか?」


「もち。あ、でもあたしは白打で片付けるから」


「は?ちょ、それずるく「頑張ってね☆」あ、日生!!」



瞬歩でその場を離れる。
と言っても柳生のところに行くだけだから大した距離じゃないんだけど。
仁王は自棄になったようで、虚に切りかかりに行った。



「柳生、援護お願い!!」



柳生はあたしが来ることが分かっていたのか動じることなく分かりました、と返事をして飛簾脚で消えた。



「末梨、俺はどうすればいい?」


「蓮は結界はって。
さっき渡した道具の中になんか色々書いてある巻物あったでしょ?
あれの十七番読めばできるはずだから」


「わかった」








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