「では本題に移ってもいいですか?」
「あれ、さっきのが本題じゃなかったんだ」
「ええ。私はすぐに了承してくださると思ったのですが貴方が勝手に話をややこしくしたので」
「・・・スミマセンでした」
別に構いませんよ、と柳生は優しく微笑んだ。
「では本題に移りますよ」
「うん」
柳生からはさっきまでの笑みはスッと消え、険しい表情になった。
「最近、立海周辺で下位席官ほどの霊圧の虚をよく目にします。
普通なら貴方の一族の結界でかなり霊圧の低い虚かギリアン以上の霊圧のものしかここに現れることはありません」
「父様や母様にも確認したが結界の不調などはなかったらしい」
「そうですか・・・。何か原因と考えられるものはありますか?」
あたしは話すべきか迷った。
あたしはこの原因なるものを知っている。
だが、言って彼に災いが降りかからないだろうか。
アイツを邪魔した奴はことごとく殺されてしまう。
それは、嫌だ。
「あたし、多分だけど原因知ってる」
「本当ですか!?」
「うん、だけど今は言えない」
そう言うと柳生は不審そうにあたしを見た。
「明日、土曜日だけど珍しく部活休みでしょ?
うちに来てよ。全部、話す」
「わかりました。ではもう一つだけ。こちらの方が重要かもしれません」
「ん」
「柳君になにかしらの力が覚醒しましたよね?」
蓮・・・
昔から日生の影響を受けて何か能力が覚醒してもおかしくなかった。
でも、しなかった。
だから蓮はずっと見えるだけの人だろうと思っていたのに・・・
「うん。でもあの時以外は何もないみたい。
あたしも蓮の力を引き出してやろうとしたけど無理だった」
「やはり。・・・日生さんは柳君以外に覚醒した方が居るのはお気づきで?」
「赤也・・・」
あたしが顔を曇らせて言えば柳生も辛そうにした。
「はい。でも切原君は虚が見える程に霊力が跳ね上がっただけで何か能力が開花したわけではない」
「つまり何が起きても何もすることができない。一番辛い立場だよね」
蓮がずっとその立場だった。
あたしが虚に狙われて怪我をする度に力の無い自分を責めていた。
あたしはずっと護る側だったから彼の辛さを理解することができない。
でも、力があったのに護りきれないのよりただ見ているだけはきっともっと辛いはずだ。
「ええ。そこで日生さんにお願いがあるのですが当分の間二人と登下校を共にしていただけませんか」
「監視役をやれってこと?」
「監視と言うより護衛ですね。虚に襲われてからでは困りますから」
まぁ、そうだね。
襲われてからじゃ元も子もない。
「わかった。でも明日からね。今日は幸村の所に寄るから」
「お願いします」
柳生にお礼を言われると同時にチャイムが鳴った。
「あれ、もう五限目終わり?戻らなきゃ」
「ちょっと待ちんしゃい」
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