「もう、いいのか?」




部室のドアをあけ外に出ると白哉が壁際に立っていた。




「白哉・・・うん、いいよ。皆の記憶も消したしね」



「そうか。・・・柳はどうした?」



「蓮も皆と一緒に眠らせた。記憶は消してないよ」



「そうか・・・」




しばらく沈黙が続いた。
末梨はその場にしゃがみこみ小さくうずくまった。
そして小さく言葉を発した。




「・・・だ・・・」



「?」



「また、大切な人を巻き込んだ・・・傷つけた・・・!!」



「末梨・・・」




末梨の前世をよく知る白哉には末梨の苦しみがよくわかる。
しかしそれ故に気の利いた言葉を書けてやることができない。



「本当は、分かってるんだ・・・あたしの周りにいる人が傷つかないわけないことぐらい・・・」



「末梨、決してそのような事は――」



「じゃあ!!」



「!?」



「あんたは泣かなかったの、傷つかなかったの!?あの戦いにあんたを巻き込んだとき、あたしが死んだとき!!」



末梨は人目も気にせず叫んで白哉の言葉をさえぎり白哉をにらんだ。
その顔は頬を赤くして涙をこぼし唇をかみしめていた。

白哉は息をのんだ。
末梨は今までここまで感情に流されることはなく泣いたりすることはなかった。
今はいくら力が不安定とはいえ、今までのように感情に流されるということはなかった。

それがこのようになるというのは今までずっとため込んできたのだろう。



それに気付けなかったのはとても悔しい。










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