放心状態な愛和を抱えながらとりあえず荒れた抜け道を出る。もう少し歩けばソノオに着くだろう。愛和大丈夫かな。

「愛和、生きてる?」
『…ええ、大丈夫です。ははは…』
(絶対大丈夫じゃないじゃん!)

空笑いしてるし。うわあ、どうするよこの子。

『ほっとけ。お前らの馬鹿力に慣れろって言う方が無理だろうしな』
『え?僕らが悪いのー?』
『当たり前だろ』
『あう』

原型をとっていたレモンがオレンジをげし、と蹴った。

「喧嘩するなよー」
『しねーよ。というかお前も責任あるんだからな』
「え、なぜに」
『俺がお前の方が馬鹿力だって教えた』
「お前のせいじゃねーか」

言わなくてもよかったでしょうが。そりゃポケモンより人間の女が力強いなんて言われたらびびるわな。しかもよりによって馬鹿力なオレンジだし。
むう、と口をつぐむ。

『すみません、馬鹿力な女性は姉くらいだと思ってましたので』
「お姉さんいるの?」
『ええ。血は繋がってませんが』
『馬鹿力ってそんなになのか?』
『…はい。私が最後に見たときはキルリアでしたが………姉は物理攻撃の方が得意でした』
「おおう」

キルリアって特攻の方が高いよね。それなのに攻撃強いとかどうよ。
でもそんな話をする愛和の顔は穏やかでお姉さんのこと大好きだったんだと思う。いつか会わせてあげたい。

『ココ、どうしました?』
「…ううん、なんでもない」

きゅ、と強く抱き締めたから愛和が見上げてきた。あたしはその小さな頭を撫でた。

「ねえ、きみトレーナー?」

いきなり声をかけられて振り返るとむしとり少年が網を持ってあたしを見上げていた。

「うん、そうだよ」
「じゃあバトルしよう!」

にこ、と笑うむしとり少年。

「どうする」
『売られた喧嘩は買う』
『僕も同じくー』
「愛和は?」

旅に出てすぐ、愛和はバトルを嫌がった。しかしクロガネジムでは立派に戦ってくれた。

『もちろんやるに決まってます』

あたしを見上げ、にっと笑う。
上等じゃないか。

「そのバトル、引き受けるよ」

その言葉に愛和はあたしの腕から飛び出し、むしとり少年はボールを放った。

「いけ、ケムッソ。糸をはくだ!」
「サイコキネシスで跳ね返して」
『そのまま相手に巻き付ければいいんですね』
「なに、わかってるじゃん」
『それほどでも』

愛和のサイコキネシスによってはかれた糸はケムッソの元に戻っていく。しかし動きを封じてしまえばこちらのものと思ったがそう簡単にはいかなかった。

「ケムッソ、もう一回糸をはいて相殺だ!」
「ちょ、面倒なことするね。愛和やれる?」
『双方操れる自信がないので一旦相殺させます。そうしたらまた動くので指示はその後に受けます』

は?なに言いたいの?と思っていると糸と糸がぶつかり、ふわりとその場に落ちる。愛和は糸が待っている間を見計らってその姿を増やした。

「あー、糸目眩ましにして影分身したわけね」
『勝手に動く方が早いと判断したので。後は指示頼みます』
「はいはい」

キッ、とケムッソとむしとり少年を睨む。彼らはやはり分身した愛和に戸惑っていた。

「電磁波!」
「避けろケムッソ!」
『本体がわからないのに避けられるわけないでしょう』

愛和の言う通り、ケムッソは戸惑ってその場を動けずに電磁波をくらった。しびれて動けないためうずくまっている。

「よし、とどめにサイコキネシスでぶん投げて」
『了解です』

ふわりとケムッソを浮かせ、ブンッと思いっきり草むらの方へ放り投げた。草むらの方に投げたのは愛和なりの優しさらしい。もさりとその場に落ちて反動で跳ね………ん?いくらなんでも跳ねすぎじゃない、あれ。

『なんか嫌な気がするんだけど』
『僕もー』
「え、ちょ…。君のケムッソ跳ねるでも覚えてるの?」
「いや、覚えてないけ「ヒマ!」ん?」
「え、草むらが喋っ「ヒマヒマ!」……え」

ぴょこぴょことヒマナッツが現れた。頭には大きなこぶが…ってまさか。
これヤバイんじゃね?と思ってるとさらに後ろからぴょこぴょことたくさんヒマナッツが出てきた。

「「ヒマー!」」
「「ちょ、うわ……逃げろおおおおお!」」

あたしは慌てて愛和を抱えあげ愛和は念力でケムッソをむしとり少年へ送った。
そんなことするならヒマナッツを止めろ?ばか!そんなことしてられる数じゃないんだってば!



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