「というわけで爽華さんの子供も探しに行きます」
「ハクタイの森だっけー、爽華ママの出身?」
「ああ。コウト父さんがそこで捕まえたらしい」
「ハクタイの森なら通り道ですね」
「うん、だから引き受けてきた」

そんな会話をして私たちはコトブキを出発したのです。お父さんはあたしと一緒にコトブキを出発した。一旦家に帰るらしい。あたしはお母さんたちに元気なことだけ伝えてと言った。だって、旅のことは全部終わって帰ってから話したい。お楽しみは後にとっておきたい派です。

というわけで今は荒れた抜け道にいる。私たちは目の前の大きな岩に足止めされていた。

「愛和あ、これ動かせない?」
『少し無理がありますね。もう少し小さかったら動かせたかもしれませんが』

すみません、と愛和はあたしの腕の仲でしゅんとした。なんか最近原型時の愛和が可愛いのだが。

『つーかお前らが壊せばいいだろうが』

はあ、とレモンはため息をついてあたしとオレンジを見た。え、マジで?荒業使えと?

「どうするよ、オレンジ」
『んー、やるしかないんじゃないかなあー』

そう言ってオレンジはちょこちょこと岩のところまで歩いて行って、軽く岩に体当たりした。

『多分僕一人でいけそー』
「お、なら頼むよ」
「あいあいさー」

オレンジは擬人化するとピシリと敬礼をした。

『え、大丈夫なんですか?』
「うん。オレンジ馬鹿力だし岩壊して洞窟崩れるわけでもなさそうだし任せて大丈夫でしょ」
『馬鹿力具合に関してはココの方が上だけどな』
「うるさいわ」

レモンはひょいとあたしの肩に乗った。オレンジは軽く準備運動をしている。

「それじゃあ行っきまーす」

軽い助走をつけて踏みきり、「ていやっ」という可愛い声で岩を蹴る。ドガーンと岩は派手な音をたてて粉々に粉砕された。

「どうよー?」

オレンジはにぱーと自慢げな顔をする。うん、癒しだ。

『え……え?』
「?どうした愛和」
『あ、いえ…』
『……言っておくが、俺らの中でこれは普通だからな。兄弟喧嘩で家壊れそうになったの何回もあるくらいだからな』
『そうですか…』

愛和は明後日の方向を見つめ、はは、と乾いた笑い声をあげた。ちょ、大丈夫なのこの子。



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