「と、とりあえず離して」

どうにか愛和の腕の中から脱出し、正面に座った。擬人化した愛和は白い燕尾服に赤いネクタイを閉めていて(この格好で寝てたのかこいつは)、髪は明るい黄緑で前髪は7・3分け、後ろ髪は肩まであるであろうものを赤い髪紐でひとつにまとめていた。顔はと言われれば切れ長で少しつり上がった目は優しげに細められていて怖いというより穏やかな印象が感じられた。美人だな愛和は。

「見とれてます?」
「へ?」

愛和が品良くクスクスと笑う。

「んー、見とれてたっちゃ見とれてたけど。愛和って男の癖して美人だよね」
「………(またこの人は恥ずかしげもなく…!!)」
(でたよ、ココの天然タラシ)
(愛和顔真っ赤ー)
「愛和、照れた?」
「!照、れて、なんか…」
「愛和かーわいー」

先ほどまでとは立場逆転。真っ赤な顔を手で押さえている愛和にあたしは抱きついてケタケタ笑った。

「そういや二人は何でここにいるの?」

あたしは愛和に抱きついたままオレンジとレモンに尋ねた。

「あー、それだけどな…」
「やっぱり僕達も旅に連れてってほしくて…」
「え?いきなりどうしたのさ」
「昨日の夜なんだけどよ…」


〜回想〜

「…………………」
ゴン!!←椅子に足ぶつけた音
「うぅ……ぐす…」
「…………………」
ガン!!←壁に頭ぶつけた音
「うぅ……ココ〜…」
「あらあら、二人ともココちゃんがいないだけで酷い有り様ねえ」
「…母さん」
「母さん〜〜!!」
「そんなに寂しいならココちゃんを追いかけたら?」
「アメの言う通りよ。多分まだコトブキ辺りにいると思うから朝早くに出発すれば追い付くわ」
「ナナ母さん………わかった」
「僕達ココ追いかける!!」
「ふふ。やっぱりココちゃん大好きっ子ね」
「怪我しないように気を付けなさい」

〜回想終了〜


「つまり寂しくてあたしを追いかけてきたと」
「つまりただのシスコンだと」
「愛和うるさい。つーか何でシスコンなんて言葉が出てくる」
「アメとナナとはどちら様です?」
「スルーか。…アメはオレンジとレモンの母親のシャワーズでナナはあたしの母親」
「別に私はうるさくないですよ。シスコンは旅に出る前オレンジが妹の見送りといっていたので。…まさかこのご時世に人間とポケモンの間にできた子供がいるなんて」
「今さら掘り返さんでいい。それに母親が違うって時点で血が繋がってないって理解しろ」
「冗談です」




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