〜愛和side〜


『ココ…』

今は眠ってしまったパートナーを念力を使ってベッドに寝かせる。高い位置で結われていた髪の毛はほどいた。どうやら自分は泣き止んでから寝てしまったらしく彼女もそのまま眠ってしまったようだ。まだ昼の3時を回っていない時間、起こすべきかと迷ったが今起こしてしまえば気まずいことに違いない。せめて、私の中でだけでも整理をつけなくては。綺麗な蜂蜜色の髪を撫でる。結んでいたせいで癖はついているもののサラサラとしていて手が引っ掛かることはなかった。

自分が人間に心を許すなんて思ってもみなかった。今までの私にとっては人間とは憎悪の対象。たまに木の実を分けてくれる優しい奴等もいたが心を許したことは一度もなかった。それがたった数時間ともに過ごしただけの少女に全てを打ち明けるなんて。本当にあり得ないと言ってもいい。

「ん…」
『っ!!』

寝返りを打った彼女の顔を恐る恐る覗くとまだ熟睡していた。少しだけホッとする反面、早く起きてほしいと思う自分がいる。本当に不思議な人だ。

初め、彼女に抱き締められたときは突然のことで驚きはしたものの恐怖や嫌悪感を感じたりすることはなかった。それでも威嚇してしまったのは不意に感じた暖かさを否定してしまいたかったのだ。平たく言えば照れたわけだ。だって私は雄、彼女は女性。彼女がそれに気づいていなくてもこちらは十分恥ずかしいのだ。でも今はその行動をかなり後悔している。彼女に嫌われてしまってはいないだろうかなんて女々しいことを考えてしまうのだ。先程からの彼女の発言を聞いていればそんなことはなさそうなのだが。

はじめて信頼した人間。そんな彼女に嫌われたり、拒絶されるのが怖い。その為なら私はバトルをすることなんて余裕だ。きっと彼女は無理をするなというのだろうけど。

『ココ』

私は貴女に救われました。貴女がいなかったら私は今ごろどうなっていたかわからない。もしかしたら今まで以上に塞ぎ込んで完全に人間不信になってしまっていたかもしれない。

『私が貴女を護ります。でも命にかえてもなんて臭い台詞は言いません。きっとそんなの貴女が嫌がるだけでしょうから』

本当になんででしょうね。

『差詰め、私もビビッときたということですかね』

この人となら、なんて淡い考えを抱いてしまう。運命なんてくだらないと思っていましたが、信じてみるのもありかもしれませんね。



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