「…なんで、皆さんここに?」

知らない漆黒の、でも怪しいとは感じない男の人に連れられてきたのは、いつもキセキと集まるカフェだった。
キセキのみんなも黒子がいるのに驚いたようで、目を見開いていた。赤司はとくに変わった様子がなく、ただ何かを考えているようだった。



「あっ、黒子君!久しぶりだね。この前は本当にありがとう」

呆然としていた僕を呼んだ声に懐かしさを感じ視線を移すと、キセキが座っているすぐ近くの席に座っている少女のような女性を見つけた。


変わらぬ笑顔、温かい雰囲気。
前に会ったときと全く変わらぬ、あの時の妊婦がそこにはいた。
変わったとすれば、新しい命が宿っていたお腹くらいだ。



「…ご出産おめでとうございます」

とりあえず、当たり障りのないお祝いの言葉を言うと、ありがとう、と微笑まれた。
こうしてみると、やっぱり結婚して妊娠しているほど年をとっているようには全く見えない。


「恭弥さんも、ここまで黒子君を連れてきてくれてありがとうございます」

「連れてくるくらい、どうってことないよ。久しぶりの君からのお願いだからね」

「……き、恭弥さん大好きです!結婚して…ってもうしてるんだった。そ、それじゃあ、抱いてっ!」

大きな声での大胆な発言にカフェにいる人全ての視線が突き刺さる。

痛い。痛いです、視線が。
この人ってこんなキャラだったのか。


「…綱吉」

「あっ、ごめんなさい。つい」

少し舌を出してそういっているのは文句なしに可愛いが、黒子を連れてきた恭弥という男性が向ける視線は冷たい。
が、慣れているのか気づいていないのか、彼女は気にした様子を見せなかった。







「あの」

そんなやりとりの中声を掛けたのは我らが元主将、赤司。
自然と視線は一点へと集まる。


「大体話はわかりました。僕はテツヤを助けたい。できれば、テツヤの望み通りに解決たいんです。…僕が独断で行ってしまっては解決はしてもテツヤの理想とはかけ離れたものになってしまうでしょうから」

淡々と赤司が喋る。
いつでも、自分


「僕らは、大切なテツヤを傷つけた者達を許さないから徹底的に潰してしまう。でも、それじゃあ、駄目だと理解できています。…先程少しお話しただけですが、沢田綱吉さんが軽い気持ちでテツヤを助けようとしているわけではないと感じました。あなたは、守れると判断したからこそ今こうして行動しているのでしょう?」


黒子は思った。
誠凛での生活も良かったけれど、やっぱりこの人達の方が好きだと。


「僕らはこれ以上、テツヤが傷つくのを黙ってみているつもりはない。だから、あなたに頼ることで事態が一番良く改善されるのであれば、僕のプライドなんてどうでもいいんです。僕はただ、テツヤを守れればそれでいい」


もっとも辛かった中学時代は消えることなく覚えているけれど。
それが、今に繋がっているのだと思えば愛おしく感じるのは何故だろうか。





「お願いします。テツヤを助けるのを手伝ってください」

これ以上の幸せなど、ありはしない。








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