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「…夢を、見たんだ」
「どんな?」

朝からセックスをしてしまった夏休みの朝、二度寝から目覚めた二人はぐだぐだとベッドの中でまどろんでいた。
こんな朝があることを教えてくれたのは紛れもなくこの男で、恐怖でしかなかった行為を快感に塗り替えたのも、この男。

「初めて、シたときの…」
「へぇ、思い出しちゃった?」
「怖かったよ、正直」
「…でもよかったから、こうして今も、いる」

ふふっと笑う声がして、後ろから抱き締められると、心臓が跳ねる。
初めての時、結局気を失うまで行為は続いた。縛られていた手もいつの間にか解かれ、快感を求め続け、それでも目覚めた時は激しく自己嫌悪に陥った。


快楽を選んだ自分は、酷く浅ましい。


不本意ながら智也の言ったことは間違っておらず、実際、その行為は嫌いじゃない。まるで恋人のような愛撫やいたわりが心地いいから、セフレとして関係を繋ぐことを選んだのは、もう2か月も前の話だ。


『祐樹、また会ってくれる?』


朝になってもぐったりとベッドに沈みこんだままの自分に智也が囁いた言葉。
行為の最中、いつからか『祐樹』と呼ばれて、それに反応して体を震わせていた自分。
会わない、という選択肢を考えられなくなるほどに、たった一度の行為で快感を植え付けられた。


みっともないってことは、わかってる。
都合のいい状況に甘えてるだけだ、って。


送られてくるお誘いのメールを待ち侘びながら、大学に通い、バイトに励む。
自分が抱いた感情が恋だと気づいてからも、こんな方法でしか繋がることができない自分が情けない。
求められるままに抱かれ、その香りを求める。


本当は、痛みを誤魔化しているだけかもしれない。
染みついた『香り』を忘れるために、身近な可能性に縋っているだけ。


だから本当は、好意を抱く資格もないけれど、どうしようもなく惹かれてしまう。


求めてもらえる間だけでいい。


それ以上は何も望まないから、だから…


智也の香りに包まれて、熱を分けあって。
そうしてこの恋を確かめて。


「ゆーき」
「…なぁに?」
「もっかいしよ」
「俺を殺す気?貴重な夏休みが…」


無駄になる、というより早く口は塞がれる。
一日をベッドで過ごすのも悪くないかも、と思ってしまったのは完全に惚れた弱み、だ。







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