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『気持ちいいだろ?…この淫乱が』

不意に思い出した遠い声が嘲笑う。
記憶の底に沈んでいたはずの痛みも同時に引きずり出され、腹筋の辺りがひくひくと痙攣し、体が震えだした。
今度も、あの痛みを乗り切れるだろうか。

「ぅう…、く、」

後ろにいる智也さんは何も言わない。
みっともなく震える体を抑え込むために唇を噛みしめて記憶を追いやる。
背中を撫でた右手がそのまま前へ回って体が被さり、萎えてしまった半身をゆるゆると抜かれれば、少しずつ芯を持ち始めていく。

「…っあ、ぅ」

智也さんは不意に体を起こすと、半身を弄る右手はそのままに、ベッドサイドの引き出しからボトルをとって中身を後ろに垂らす。
ひやりと肌を伝った冷たさに一瞬息を飲むが、竿を上下して擦る感覚に意識が寄った。

…息、して、力抜かなきゃ。

以前、力が抜けずに激痛に襲われたことを思い出す。
抵抗しないで力を抜くこと。それが一番体を傷つけないで済む。
震えちゃだめだ。従順な振りをして、やり過ごすしかないんだから。

「指、挿れるから」
「ぁ…ん、っはぁ、ッ」

つぷりとアナルに指が入ってくるその瞬間に、息を吐いて力を抜いた。
慣れない異物感に苦しさは感じるが、前ほどの痛みは感じない。
だが、挿れたときの智也さんの怪訝な表情が少し気になった。

…痛くしてはこない。だけど。
何かを間違えただろうか。

「ナカ、狭いのに…もう指飲み込んでる」
「あ…あ、っふぅ」

ぐり、と指で内壁を押されれば排泄感にも似た感覚がせり上がり、生理的な涙が零れる。
何かを確かめるように内壁を弄ったあと指が出ていく感覚に身動ぐと、カリの括れをつまんで擦られた。

「ッあ!…は、んぁ!」

同時に、もう一本増やされた指が一気にねじ込まれ、ばらばらと指で掻き回されれば、無意識に腰が揺れた。

…どうしよう、俺、ッ

「…感じてる?腰が揺れてるよ、…祐樹」
「そん、なこと、…ッふ、ぅ、んん」

顎を持って振り向かされて舌が割り込んでくる。
その瞬間、胎内を掻き回していた指が前立腺を捉え、言いようのない感覚が沸き起こった。

「ッふぅう!…んぅ、ん!」

嬌声は口を塞ぐキスに飲み込まれて、鼻から息を漏らした。

歯列の裏をなぞり絡まる舌。
確実に感じる一点を突く指。

でも勘違いは、したくないんだ。

「ん、ッは、ぁ…!」

キスから開放されてベッドに力なく沈んで、敏感になった乳首が振動に合わせて擦れる。
再びぬるりと亀頭を撫でられれば、背筋を快感が走った。

「あ…ッあ、ン、ぁ」
「祐樹…、こんなに零して…」

囁く智也さんの手は止まらない。
一度精を放ったはずの半身は脈を持ったまま、先走りを滴らせている。

「んン、う…ぁ…ッ」

――こんなの…っ

背中に被さる智也さんの体温を感じながら、苦痛どころか快感ばかりを与えられることに激しく動揺していた。




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