epilogue


 光の収まりつつあった部屋、私は天使くんの両手をぎゅうっと握って、感極まっていた。

「私、私ね。天使くんと会えて、天使くんが隣りに来てくれて、うれしい。過保護だったかもしれないけど、いつも守ってくれて、ありがとう。天使くんが私の守護テンシでいてくれて、本当によかった。私は──」

 にこにこしながら相槌を打ってくれる天使くん。

「え、っと……」

 ……何か、ちょっと、恥ずかしいこと言ってるような、気が。してきた。

 顔が熱い。

「だ、だからね、その……」

 はたとしてしまったのがいけなかったのかもしれない。でもだって、天使くんが喜んでるように見えた、から……?

 よくわからなくて目が回り始めたところで、両手がきゅっと握り返された。
 控えめな強さ。くらんだ意識を支えてくれる。

「ありがとうございます、うれしいです。オレ、もっとがんばります」


 どきどきどころじゃない。済むわけない。

 止まる。



 ねえ、厄介なお隣りさん。私はいつか、呼吸の仕方を忘れちゃうかもしれないよ。

「……なつきさん?」
「天使くん」
「はい」

 大きく息を吸って。
 ゆっくり吐いた。

「……これからも、よろしくね?」


 間を置いてもう一度握り返された手はぎゅっと痛かったけど、しっかりうなずいた天使くんがちょっといじらしかったから。
 私も一生懸命、その手を握り返した。



 お隣りさんは天使くん おわり

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