身体測定の用紙の空欄を次々に埋めて、わたしは今日の目標へ一直線だった。テキパキと形式的に測定を進めながらも、とある人物から目を離さない。離してたまるものか、わたしの次の強さはきっとそこにあるはずだから。 認めよう、葉山楓。 君はわたしより強い。 「やったよ、ことり! わたし、身長が一センチも伸びたの!」 まずは身長体重その他もろもろのデータを知ることでわたしとの差異をチェックする。当面はその解析と基本的な修業をし、足りないものと伸ばすべきところを定める。もちろん、相手のことと共に自分のことも知らねばならないので、彼と積極的に接触をするつもりだ。 誤解を招きそうなので弁明させてもらうが、わたしはあの不審者に心を開いたわけでもなければ、これからそのようにするつもりもない。強くなるために必要な対象として見ているだけだ。今でも何故やつを倒せないのかわからないくらいで、正直、気に食わない。 「ことりってば、なに見てるのー?」 「うぐ」 小枝に頬をつままれた。 「あっちのほうにいるのは、あら。もしかして、葉山くん?」 「ことりが葉山を見てるってことは、あいつまた何かしたの?」 「お話したいなら呼べばいいんだよ。おーい!」 小枝が手でメガホンを作って葉山楓に呼び掛けた。彼と、その周辺にいた男子生徒たちが振り返る。 小人くんと、小人くんにぐったりもたれ掛かる癖毛くん、その癖毛くんを引っ剥がそうとしていた前髪くん。 壮絶だ。 葉山楓と目が合った。 「ほらほら、ことり。楓くんに手を振って?」 小枝に右手首を掴まれて、わたしはそちら側の手を無理やり横に振らされた。葉山楓は子供っぽい笑顔で手を振り返してくる。 見た感じだと身長は変わらないだろうが、体重はどうしても男子のほうが重いだろう。それが男女の差というものだ。肉付きはそう悪くないし、バランスも取れていると、思う。あの体の形、雰囲気には何故か覚えがあるが、どこで見たのか……いや、恐らく気のせいだ。 見た目だけの判断はもちろん誤りがあるので、きちんとした数値を聞き出さねば。今のうちにささっと済ませてしまうのがベストだろう。 近いうちにある体力測定の結果も把握したいところだ。 好都合なことに、葉山楓はとことことこちらへやってくる。その手には身体測定の用紙。 [しおりを挟む] ← |