部長さんはほわっとした笑顔で答えた。

「クッキーとか、ブラウニーとか、そういうようなお菓子と、五目ご飯とかのちゃんとしたご飯ものです」

 三人してわたしを見る。一人は大した感情を込めてはいないらしいが、残りの二人は自信のある様子。何に対してのものかは言わないでおこう。

「わかったかな?」

 わたしなりに解釈はしたつもりだったので、期待に応えてうなずいた。

「よし、じゃあ部員紹介に移るぞ。時間ないから簡易版で。名前と役職、部長から」

 宮部くんとやらが部長をすれば良いのに、などと思っても顔には出さない。

「はいっ。私、波崎(はさき)なしろ。さっきから部長、部長って呼ばれてる通り、部長です」

 ふわふわセミロングのぽわぽわ部長こと波崎なしろ先輩が気の抜けるような笑顔をわたしに向けた。
 ああ、何だろう。ものすごくマイナスイオンが発散されている気がする。癒し系、とでも呼べばいいだろうか。見ているだけで和めそうなタイプだ。

「で、オレが宮部鈴人(すずひと)。副部長してる。こっちの目付き悪くてやる気ないお嬢さんが平部員の藤沢(ふじさわ)花音。こいつは人数合わせだから頼らないほうがいい」

 部員から頼りにされているとお見受けした副部長さんは、隣りに座っていたサイドテールの女子生徒までついでに紹介してくれた。
 そのサイドテール先輩はなすがままにし、わたしと目が合うと、少しだけ笑った。髪を結っているのは、わたしから見て右側。反対は、まとめられなかった髪の毛を顔の横に垂らしているのだが、隠れた耳がちらりと覗いたとき、わたしはそこにピアスを確認した。目をしばたく。

「内緒よ」

 まあ、それを教員などに言ったところで、誰かが得をすることもないだろう。了承した。

「今度はきみの番」

 きみというと、わたししかいない。

「……椎野、ことりです。7組にいます」

 役職などというものはないし、部員でもないので、クラスを紹介してみた。

「ああ、やっぱりか」

 サイドテール先輩がつぶやく。
 何が、と言った感じで、部長さんと副部長さんが彼女へ視線を集めた。

「あたし、軽音じゃん? その子、昨日、高堀(たかほり)に勧誘されてたのよね」

 軽音。軽音学部。
 昨日。勧誘。というと、あの、バリバリ働きますといったふうな女子生徒が思い浮かんだ。昼間も新部員まで動員して勧誘をしていた。どんな根性だ。
 高堀、と言うのか。

「しかもそのとき、新しく入るらしい後輩に……」

- 65 -

*前]|[次#
しおりを挟む




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -