X県立星上高等学校。 それがわたしの通う学校の名前。学力は並、運動能力もまちまちな生徒たちが集まっていて、これといって突出した何かをやっているとかそういうものもない学校。平凡な場所。 でも、わたしにはそれくらいがちょうどいい。将来だってまだ決めていない上に、自分が何をしたいのかもわかっていないから。ただ、家から遠くもないし自分の学力でも行けそうな場所だったというだけ。 新入生の詰め込まれた体育館は、彼らのひしめきあう声で満たされていた。集会なんてこんなものだ。 ちなみに、わたしのクラスは1年7組だった。1年生は8組まであるから、何か微妙な数字だ。 校長の話が始まる。星上高校の校長の名前は……確か、羽毛田(はげた)。ちなみに頭もハゲている。ふざけているのだろうか? ……そんな外見の話はひとまず置いておこう。とりあえず、やつらの話はとてつもなく長い。そして、生徒は寝たり誰かと話したりするからそれを聞いていない。実を言うとわたしもその部類の人間だったりするのだが。 ほら、催眠術にかけられたみたいに何だか眠たくなってきた……。 が、しかし。 「だからー、オレは春休み中に運命の出会いをしたんだってば!」 わたしの眠りを妨げる有害な音、否、声が聞こえた。何だ、誰だ。 その音源を探すために落ちかけていたまぶたを押し上げて周囲を見回す。確かわたしの後方から聞こえたはず。まあ、声の主を見つけて何かしたいとかいうわけでもないのだが。 そんなことを考えているうちに、わたしはそいつを見つけた。 ──あれ? 「それで、その子が……」 男子数人と話し込んでいたその少年の背中には、なぜか見覚えがあった。どこで見たのだろうかと思考を巡らせていると、何となく嫌な予感がした。 そいつが振り向く。 『あ』 その時、二人の声が綺麗に重なった。 「君──」 [しおりを挟む] ← |