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 学校へ来たら葉山楓に絡まれて。昼休みにはイケメンくんに捕まって、小人くんは二重人格者で。
 屋上ではクラスメートの不良くんに遭遇、そして養護教諭は音も無く現れた。
 授業後には天ノ宮さんに激突して、保健室へ赴くことになった。用事を済ませて、いざ本題へと構えたところを厄介な人間に捕まり時間は午後五時前。

 コンクリートできちんと舗装された道。
 ぐったりしたわたしの隣りを歩くのは、自転車を引く葉山楓だった。
 帰り道が同じなのだと言われたが、納得などいくはずがなかった。自転車に乗ってさっさと帰ってしまえばいいのに。

「オレさー、楽器好きなんだよ。中学のころは軽音楽部なんてなかったしさ、高校入ったらやりたいなって思ってたんだ」

 何を楽しそうに話しているのだ、こいつは。

「やりたいことはまだまだあるんだけどさー、一気には無理だし。だからって諦めるつもりはないけど、まずはこれからだ! って決めてた。ことりもそういうの、あるだろ?」

 卵は買わない。
 あの強引な女子生徒に幾度も入部の勧誘をされたが根気よく断り続けた。長い戦いだった。

「おーい、ことりってば」

 今日という日は長すぎたのではないかと思う。今朝の記憶が随分と埋もれてしまっているようだ。
 あまりに多くの人と関わったせいだろう。こんなことは初めてだ。

「おーい……」

 中学までは極力静かに、目立たぬよう、ひっそり過ごしていた。一人でいることに嫌悪感もなかったし、自分でも分かるくらいコミュニケーションを取るのが下手だったからだ。楽をしていたのかもしれない。
 だから、今まさにこうして、慣れない疲労感でいっぱいなのだ。

 カラカラと車輪が回る。

「変わってないって言えば変わってないよなあ」

 空に向かって熱く語り掛ける少年。

「雰囲気って言うのかな。性質とか、そんな感じの。よかった!」

「そう」

「きっと間違ってない。だから、信じて突き進む!」

 わたしの適当な相槌にも気付いていないようだ。

 よし、頃合だろう。

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