digimon | ナノ

01 「ピタ、ゴラ、スイッチ!」灼熱!バードラモン

(12/67)


「ガンダーァラ、ガンダーァラ、愛の〜国〜ガンダーァラァ〜♪……ん?」


 ゴォッという謎の音が不意に上空から聞こえ、私は空を見上げる。
 みんなも今の怪奇音を不思議に思ったようで全員が空を見た。


「何の音だ?」


 そう太一が言った直後、音の原因が頭上を通りすぎていった。木々の隙間から見えたのは何やら黒くて丸いモノ。
 みんなは口々に今飛んでいったモノについて意見を交わす。


「歯車みたいだったな」

「空飛ぶ円盤じゃないの?」

「歯車型の隕石だったりして!」

「空飛ぶ黒いモノといえばゴキ○リでしょ」

「ゴ○ブリはあんな音出して飛ばないだろ!」


 夏は特によく出るんだよあいつら……。暗闇をでかい羽音をたてて飛ぶ姿はさながら悪魔だ。まったく勝てる気がしない。
 しかしいくら考えても答えはわかりはしないのだ、丈は呟くように言った。


「なんにしても、いい感じのするもんじゃないな」

「そうかな?オラわくわくすっぞ!」

「悟空さんはお帰りください」


 直後、バキッという鈍い音が聞こえた。
 音がした方を振り返ると、後ろを歩いていたタケルが木を踏み足場が崩れ転んでしまったようだ。すぐに転んだタケルを起こそうと太一が駆け寄る。
 その時私はまたヤマトが複雑そうな顔をしていたのを横目で見る。あらあらまたこのご兄弟はどうなさったのかしら。


「大丈夫か、タケル」

「いったぁ……けど大丈夫、我慢する」


 タケルはちょっと涙目で言うと、空が優しくタケルに話しかけた。


「我慢しなくてもいいのよ。痛かったら痛いって言ってもいいんだから」

「うん……ほんとは、ちょっとだけ痛い……」


 優しい声で言われて安心したのか、タケルは遠慮がちだが本音を言った。
 空は本当に面倒見も良いし、人を安心させてくれるオーラがある。
 すると途端に今度はパタモンが心配そうに騒ぎだす。


「大丈夫タケル!?」

「あんさんに言われたないなぁ」


 ひとり慌てるパタモンにテントモンがツッコミをいれた。和やかな雰囲気にみんなも笑う。
 タケルの応急措置を終えた空が立ち上がって明るく言った。


「さぁ、行きましょうか!」

「そうだ。泣き言言ったってはじまらないからな!」


 空の言葉にヤマトも便乗するが、それに太一が困ったと眉を顰める。
 珍しいなあ、太一がそんなこと言うなんて。


「そうは言っても、どっちに行ったらいいかなんて誰にも分からないし……」

「それはそうだけど……」

「何を言う、己の信じる道をただ真っ直ぐ突き進むのみよ」

「そうか、じゃあな」

「お元気で」

「ちょ、冷たすぎィ!」


 なんという絶対零度。太一と光子郎、私の扱い慣れてきてないか!?お姉さん凍えてしまいそうだよ!
 そんな私達はさておき、その横でピヨモンが空に擦り寄って甘えはじめた。


「アタシは空がいてくれれば、それであーんしんっ!」


 えへへと笑いながら空にくっついてそう言うピヨモンは心底幸せそうだ。そんな様子のピヨモンに対して逆に空はただ困った顔をする。


「そんな……100%安心されても困るんだけどな……責任とれないよ?」

「ひゃくぱあ?」


 聞き慣れない言葉らしく、ピヨモンは首を傾げて空に聞く。


「いい、いい。気にしなくて」

「せきにんとれ?」

「いいってば、気にしないで」

「アタシ空の喋ってることいっぱい知りたい!教えて?」

「そんなの知らなくていいよ……」


 ピヨモンは興味津々に空に聞き続ける。
 しかし空は困っているのを通り越してうんざりしているように見えた。


「何じゃれるんだよ」

「余裕だなぁ」

「……好きでじゃれてるんじゃないわよ」


 先へ歩きだしたヤマトと太一が振り返る。
 それに対し空はムスッと不機嫌そうに返事を返し遅れをとらないように走りだした。
 ピヨモンはそんな空の手を握り幸せそうに笑う。


「ピヨモンは人懐っこいデジモンなんや」

「なるほど。デジモンによってそれぞれ性格が違うんですね」

「人懐っこいのかぁ、かわいいなあピヨモン」


 近くを歩くテントモンと光子郎の興味深い会話に加わる。
 ぴよぴよお母さんについていく雛鳥のようでほのぼのする。ただ、空の気持ちも分かるし尊重もしたいがそれではピヨモンが一方的すぎて少しかわいそうだ。
 あ、そうだ。


「ねぇ、インプモンはどうなの?性格。なんとなく分かるけど」

「ひねくれ者で寂しがり屋や」

「なるへそ」


 まんまだなぁ。つまりやはりあれか俗にいうツン……いやなんでもない。心の中にしまっておこう。
 そう私が心の中でこっそり思っていると光子郎が話しかけてきた。


「灯緒さんはインプモンのことどう思ってるんですか?」

「どうって?」

「見たところ、パートナーというものに一番固執しているのは灯緒さんです」

「嫌とちゃいますん?文句を言うだけ言うて逃げて……悪い奴やないねんけど……」

「私は嫌なんて一寸たりとも思っちゃいないけど」


 何を聞いてくるかと思えばそんなことか。
 と私が怪訝な表情をして言うと光子郎とテントモンも不思議そうな顔をした。


「ただ次会ったら一発殴りたいとは思ってる」

「な、殴る!?」

「『話はちゃんと最後まで聞きなさい』って言ってやんの!」

「…………」


 常識だろう!と私が笑うと二人はポカンとしていた。してやったり。


「まあ、灯緒さんらしいと思います」

「アリーデヴェルチ!」

「褒めてはないです」

「ファッ!?」


 そんな私達の会話は知らず先頭を歩く太一とヤマトが声を上げた。


「あ、森から抜けるぞ!」

「よし行くぞ!」


 森から抜けるとそこは一面砂でした。
 って森からいきなり砂漠地帯に突入!?てか暑っ!


「これってテレビで見たアフリカのサバンナってとこに似てる……」

「サバンナって言うより砂漠じゃないだろうかこれ……」


 光子郎が辺りを見回しながら言うが私の記憶ではサバンナといえばもう少し草が生えていた気がする。
 てか電柱!電柱なんで立ってるんだ!?


「じゃあライオンとかキリンとか、そういうの出てきちゃうのか?」

「ま、そんな普通の奴だったらまだマシだけどな」

「ここにはそんな動物いないよ?」

「ガブモンの言うとおりですわ」

「ここにはデジモンしかいない、か」


 太一とヤマトの言葉にガブモンとテントモンはあっさりと否定した。
 太一は何度も聞いた言葉にはぁとため息をつく。


「光子郎の見たサバンナって電柱とか建ってたか?」

「いえ、建ってませんでしたね。灯緒さんは?」

「無いねぇ。それこそ電柱なんてもの、近くに近代的な町でもなきゃないんじゃないかな?」

「きっと人間が近くにいるんだ!きっとそうに違いない!」


 ヤマトに聞かれた光子郎が私に聞く。私が言葉を言った直後丈は声を上げた。
 まだ諦めてなかっのか丈おおおお!逆に尊敬するよ!


「えーでも海岸の公衆電話とか湖の電車みたいなことだってあるじゃん!」

「そうだよ!期待したってどうせいやしないよ」

「いや違う!絶対絶対人間がいるんだって!」


 太一と私が丈に言うが丈は断固として意見を譲らず力説する。
 うーん、ここまで来ると見上げた根性だ。


「ゴマモーン……どうにかしてよー」

「オイラに言われたってなぁ。丈ガンコだし」

「光子郎はん、光子郎はん。せやからデジモンしかいまへんて……」


 ゴマモンに助けを求めるも流石のゴマモンでも丈は止められないようだ。
 テントモンが光子郎に小声で言うのも丈は気付かない。


「さーて、ここは一体どこでしょ〜!」


 そこで丈に近寄ったのは、何故か笑顔で楽しそうなミミ。


「じゃーん!」


 そう言ってミミが目の前に出したのはお父さんから盗ん……借りてきたというコンパスだ。
 おおお、これなら少なくとも方角がわか――。


「いやーん!何コレぇ!?」


 みんなが期待してコンパスを覗きこむとコンパスの針は止まらずにぐるぐると回りはじめた。
 ピーリカピリララ♪コンパスよ止まれ!


「砂みたいに見えるけどこれよく見たら鉄の粉だ……磁石にくっつきますよ」

「えぇ〜!?」

「さらばコンパス。君の勇姿は忘れない……」


 光子郎が地面の砂を手に取りみんなに告げる。
 ミミはがっくりと肩を下ろした。そして空も深刻そうに眉をひそめて呟く。


「やっぱりあたしたち、とんでもないところに来ちゃったのかしら……」


 その言葉にみんなも沈黙する。
 しかしそんな重苦しい雰囲気の中素っ頓狂な声を上げるのは――私だ。
 私がちらりと後ろの木をなんとなく見た時、茂みの影から見えた黒いしっぽ。


「あああああああ!!」


 私が指を差して叫ぶとみんなも驚いて振り返る。
 予想通りそのしっぽの主はインプモンだ。プッスー!頭隠して尻隠さずだよこの子。ツンデレの上にドジっ子か、属性盛りすぎでは?
 振り返ったデジモン達が一斉に叫ぶ。


「あーっ!インプモン!」

「げっ」

「ちょっと、げって何だよ!?こちとらあんたを一生懸命探してたっつーのに!」

「フ、フン!そんなもん知るかよ!」


 インプモンは驚いたが、すぐに憎まれ口を叩きながら私達の横を走り抜けてサバンナへと駆け出した。


「悔しかったら来てみろ!」

「あ!こらぁ!待ちなさああああい!」

「灯緒!」

「灯緒ちゃん!」


 みんなの制止を無視して私はインプモンの後を追うために走りだした。
 ふふふ、それは挑戦状として受け取ったぜ!


「ばか、ホントについてくんな!」

「三千里くらいなら余裕で行くぜぇぇええ!ランランララランランラァァァァァン!」

「歌いながら追いかけてくんなぁぁああ!」


 うわああああ!と叫びながら逃げていくインプモンと凄まじい勢いの灯緒を見て、みんなの心はひとつになったらしい。同情という意味で。


「か……完全にインプモン怯えてるわね……」

「怖ぇ……」









「……暑い……!」


 ジリジリと焼け付くような日射しが私達を襲う。
 もう本当に砂漠を歩いているようだ。行ったことないけど。
 砂漠ならどこかにキャラバン隊休憩所でもないのか!


「てかインプモン……なんでサバンナに逃げたし……」


 どうやらインプモンは見た目よりも熱さに強いのだろうか、軽々と走り去りもう姿は見えなくなっていた。
 あんにゃろう、最初から撒けると確信してこっちに来たな!今度会ったら問答無用で取っ捕まえてやる!お縄だお縄!御用改である!
 

「……それにしても暑いですね。早く水を確保した方がいいんじゃないですか」

「うーん……それもそうだな……」

「全く、熱いのは私の魂だけで十分だってのに!」

「それもどうかと……」


 光子郎のツッコミにいつものキレがない……!こいつぁてえへんだ!
 それは当たり前で、光子郎だけじゃなく子供達もデジモン達もみんながこの暑さに体力を根こそぎ奪われていた。


「暑い……このままじゃ全員干上がっちまうな……」

「確かにな……」

「おらぁぁあああ太陽!ちょっと休暇貰いやがれ!俺がガンダムだぁぁぁー!」

「灯緒うるさい」

「何気に灯緒さんが危ないですね……」

「ピタ、ゴラ、スイッチ!」


 精神にかいしんのいちげき!灯緒に9999のダメージ!灯緒は暑さで頭をやられた!


「うぅ……」

「暑いのかいゴマモン?」

「氷が欲しい……せめて、水……!」


 丈が隣を歩くゴマモンを心配そうに聞く。見たところゴマモンが一番体力を消耗しているようだ。
 水辺のデジモンみたいだし無理もないか。しかも地面につく面積多いしね。
 そしてその後を歩くのは辛そうな表情のミミと今にも萎れそうなパルモンだ。
 パルモンも見た目はまんま植物だ。この日射しはきつ過ぎるのだろう。自慢の花がしなしなになっている。


「帽子貸してあげようか、パルモン?」

「ありがと……」

「わぁ似合うじゃない」


 ミミが帽子をパルモンにかぶせる。ミミの言う通りなかなか似合うなぁ。
 そんな元気のない会話とは逆に明るい声がした。


「そーら、そーらー!頑張って歩こー?」


 意外にも暑さが平気らしいピヨモンが楽しそうに空に甘える。しかし逆に空は暑さと疲れで顔をしかめた。


「っああもう!いい加減にしてよっ!」


 空はついにじゃれついてくるピヨモンに対して声を荒げた。言葉のとおりいい加減堪忍袋の緒が切れたのだろう。
 むしろ今までよく耐えたよ……。この暑さでは機嫌が悪くなっても仕方ない。


「あたしはね、今喉が渇いてて疲れてるし歩いてて疲れてるし、無邪気にじゃれつかないの!余計に疲れるわ!」


 みんなも初めてみる怒りの表情の空を驚いて見る。そして当のピヨモンは空の言葉にしゅんと悲しそうに肩を落とした。


「空、疲れてるんだ……ごめん、ピヨモンおとなしくする……」


 そうしおらしく言われると空は弱いのだろう。そんな様子のピヨモンを見て開きなおったように言う。


「……〜わかったわかった!一緒に歩こう!」

「……アタシ嬉しい!空大好き!」


 ピヨモンも空が許すとまたすぐに嬉しそうに甘えはじめた。
 結局は許してしまう空らしい優しい行動にヤマトもふ、と笑う。


「しかし歩いても歩いても何も見えてこないな……」

「森に戻った方がいいかもしれないな」

「え〜……せっかく暑い思いしてここまで来たのに……」


 前に向き直ったヤマトが呟くと丈が頷いて意見を言った。


「ちょっと待ってくれよ……ん?」


 そこで太一が取り出したのは太一の唯一の持ち物の単眼鏡だ。
 太一は単眼鏡を覗いて前を見る。すると太一は急に大声を上げた。


「村だ!」

「えぇっ!?」


 みんなが驚くなか、丈はまた目を輝かせた。


「ほらほらほら!村だって!やっぱり人間がいるんだよ!」


 今度ばかりは村という単語に他のみんなも期待をする。


「テントモン……ここにはデジモンしかいないんだよね?」

「そうでっせ。人間なんていまへんてずっと言うてますやん」

「何にせよ、行ってみる価値はありそうですね」


 私がこっそりテントモンに聞くと予想通りの答え。
 そう簡単に人間に会える訳がない。少なくともここのデジモン達は人間なんて私達以外に見たことはないのだ。


「ま、光子郎くんの言うとおり行ってみれば分かるこったな」

「よし、あの村へ行こう!」










「なん……だと……?」


 この痛いくらいに暑い中村があると期待に胸を膨らまして走ってくれば。村には村だったが。


「ピョコモンの村だったのか……」


 そう、その村はピョコモンだらけだった。
 すごく……小さいです……。村が。建物もピョコモンサイズでとても可愛らしい。体力を消耗してなかったらテーマパークに来た子供のように普通に喜んでいたことだろう。


「ピョコモン!みんなピヨモンの仲間!」


 進化する前までは同じピョコモンだったピヨモンは嬉しそうにピョコモン達を見る。


「ねぇねぇなんていうデジモンなの?」

「え、あたし?」


 ピョコモン達は私達の周りに集まってくると無邪気に空に問い掛けた。空はそんな質問をされると思ってもなかったようで驚いて自分を指差す。
 驚いている空の代わりにピヨモンが得意気に質問に答えた。


「違うの違うの!この人達はデジモンじゃないの!『人間』っていう生き物!と〜ってもいい人達!」

「『ニンゲン』?」

「『ニンゲン』?デジモンじゃないの?」

「そうだよ〜『インゲン』でも『ニンジン』でもないからね!」

「何言ってるんだよ……」


 今度はピョコモン達が聞き慣れない言葉とデジモンではない生き物だということに驚いた。
 そんな傍から見るとかわいらしい光景とは裏腹に隣の丈はがっくりと肩を落としていた。


「あぁ……人間がいると思ったのに……」

「ほらね、そう簡単に人間がいるわけないって!」

「なにもかも全てピョコモンサイズだぜ……」

「あたし、昔ママに読んでもらった『ガリバー旅行記』思いだしちゃった」


 確かに村の建物という建物はピョコモン達のサイズで人間には小さすぎる。パタモンとギリギリでゴマモンくらいしか入らないんじゃないかコレ?勿論私達人間は手足も伸ばせないサイズだ。


「上手くしたらここで一泊ぐらい出来るかと思ってたけど……」

「無理みたいね……」

「これじゃ家に入ることもできませんね」

「人間は無理かぁ……」

「ボク達だったらなんとかなるけどね!」


 口々に言いがっかりする子供達とは逆にパタモンは楽しそうに言った。君は家に入れるからいいよねぇ。


「ピヨモン、どうやって進化したんだ?」

「空と一緒にいたらいつの間にか進化したのよ!」


 ピヨモンは変わらずピョコモン達と楽しそうに話している。和むなぁ。


「『のよ』?なんだそれ、ピヨモンの言葉?」

「ううん、違うのよ!これは空が使ってる言葉!一緒にいると空の言葉たっくさん覚えちゃうから!」

「へぇー!」


 ピヨモンが嬉しそうに話すとピョコモン達も楽しそうに質問をする。
 その間に空は近くの家の影に座り込んでその会話を聞いていた。


「それよりどうして進化できたの?ただニンゲンと一緒にいれば進化できるの?」

「それはきっと、空を守るため!」

「…………」


 ピヨモンが胸を張って当然のように言いきると空は顔を不機嫌そうに歪ませた。余っ程精神的に参っているのが見て取れる。
 よし、ここはカウンセラー灯緒が一肌脱ぎましょう!たった今開業しました。もちろん無免許です。


「お嬢さん!かわいい顔が台無しですよ?」

「灯緒ちゃん……」


 私が話しかけると空は驚いたように顔を上げた。


「ピヨモン、お姉さんみたいだね」

「……そうね」


 それだけ言うと空はまた俯いた。
 うーん、これは溜め込んじゃうタイプだなぁ。お母さんタイプというのは、優しくて包容力がある反面、自分のことは表に出さなかったり二の次にしてしまいがちなタイプが多いと私の中で統計が出ているのだ。


「空ちゃん、ピヨモンのこと嫌?」

「……そんなことは……」

「本当に?」


 空が否定しようとすると同時に私は空の真正面にしゃがみ空を見つめる。
 空は驚いて目を見開いたがやがて目を伏せてポツリと言った。


「……私、あんな甘ったれとうまくやっていけるかしら……」

「よし!じゃあもちろん、うまくいく!」

「え?」

「保証だよ、保証!もし何かあったら私にガツンとクレームしてね」


 私は笑いながらそれだけ言ってみんながいる方に歩きだす。
 空はポカンとして私の背中を見ていたが、やがてクスリと笑った。



/【BACK】/


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -