まっくろ、あかいろ、まっしろ


(仕方ないじゃない、)



「さぁ、リーフ様。
 こちらへ。」

そう、ひざまずいて手を差し伸べながらいうのはランスで
その手をとって華麗に歩くのは私のお姉さまのリーフでした。
私のお姉さまは、可憐で可愛くて、
言葉で表すなら、美しさ10割、愛らしさ10割、可愛さと美しさを
どっちも兼ね備えている、そんなかたです。
そして、この国の王妃様である。
王妃といっても、とても優しくて
性格も良くて私の自慢のお姉さまです。
ランスというのは、お姉さまのガーディアン。
守護する騎士のような存在でした。

私がぼーと、二人を眺めていると
ランスが私の視線にきずいたのか
私に視線をむけたきた。
ばちっと、。はっきり。
ランスも気づいたのか、にこっと笑顔を下さった。
私も、できるだけやわらかく、笑顔を彼に返しました。


「それじゃあ、ユリ、
 すこし、ランスとお買い物に出かけてくるわね、
 お留守番できる?」

「こ、子ども扱いしないでください!
 私はもう17ですよっ!」

「ふふっ、かわいくてつい、
 それじゃあ、大丈夫だとおもうけど
 お留守番よろしくお願いしますね。」

「はいっ、」


お姉さまの笑顔はステキだ。
砂糖菓子のように愛くるしくて、
ガラス細工のように美しい。
私が男の方だったら、
ぜったい、お嫁さんにしたいな、そうおもう。
姉ばか、なんていわれてしまうかもしれませんね。
けれど、そのぐらい私はお姉さまに憧れと畏敬の念を
いだいていたのです。
きっトランスも同じで、
ランスはお姉さまを愛しているそんな気がしています。


二人ともでていきました。
私はこの広い王室に一人になってしまいました。


「少しだけ、寂しいです、」


天井を眺めたり、
王家としての書類整理をしたり、
ベランダに出てお花に水あげたり、


なにをしていても、心にぽっかり穴が開いたような、
空虚感と寂寥の感が心に居座っているような、
もやもやした感覚。
二人が一緒に楽しそうな風に出かけていることを
思い浮かべると、物悲しくて。




「お姉さま、好きな人とかいらっしゃるのかなぁ、」


ソファにすわり、ふとつぶやいたときでした。
家来が私の部屋に飛び込んできたのです。
重いよろいをみにまとったまま。
妙に息の荒い、家来に私は何が起こったのかと思い
不安を抱きました。


「どうなさったのですか、?!」

「ユリ様、隣の王国のものが、襲ってきました、っ、」

「え、?」

「この王国をつぶすと、まずは此処から攻めると、
 王妃の首を取ると、だから、リーフ様とお逃げください。」

「、っ、お姉さまはランスと外出中です、!
 何を言ってるのですか、!?
 私だけ、逃げるなんてできません、
 王妃は、国を守るためにいるのです、
 仲間を守るためにいるのです、
 私が逃げてどうするのですか!?」

「ですが、」


私が指揮をとらなくては、
お姉さまが必死で作り上げたこの王国を壊されるなど、
この王国を守らなければ、
この長いスカートがじゃまだ、


ビリリリッとすそをやぶった。


「教えてください、
 敵はどの入り口から、
 せめてきているのですか!?」


「こ、こっちです!」



走る家来に走って着いていけば、
多くのものが、多くの敵と戦っていた。
この国のために、

キィンと嫌な金属音があちこちで響いている。
剣と剣がぶつかり合う音。

どうすれば、
このままじゃ、家来が、


誰も殺したくない、
誰も殺されたくない、
けど、このままでは、


仕方ない、!!
私は家来に盾だけを頂戴すると
敵軍に向かいました。

「っ、」


トサトサッと、つぎつぎに倒れていく敵軍に
私の家来は驚きの表情を浮かべていた。


「ユリ様、!?
 なにをなさって、!?すばらしいっ、」


家来の一人の感嘆の声が聞こえる。
何をしているといえば、
簡単に言えば、麻酔のようなものだ。
針で、つぼをさして、一時的に神経を麻痺させる。

お姉さまに教えてもらった医療に使うことの一つ。

「っ、あ、」

一番強そうな人に、
敵軍の指揮者に、針を剣ではじかれてしまった。


「くっ、!?」

盾で、相手の攻撃を必死に防ぐ、。
家来がこっちに向かってきてくれているが間に合わない。
相手は剣を振り上げて、
わたしはつぎにくる、衝動にめをつむった。

衝動は来ませんでした。
代わりにキィンと、かわいた金属の音。
力強く瞑った眼を開ける。

「ランスっ!?」

「ユリ様、!」


ランスは力強く剣をふった
相手の血をまとって、それでもなお、
揺れ動く剣はまるで赤い蝶のよう。


「ランス、駄目っ、
 それ以上は、死んでしまいます!!
 それに、お姉さまをどこに、!?」

「王室が襲われていると街の人に聞いたのです。
 リーフ様は…。」

「まさかおいてきたというのですかっ!?
 あなたは、お姉さまのガーディアン、
 なのにどうして!?」

私はつい大声をあげてしまいました。
するとランスは血がついた剣を持ったまま私に
近づきこういいました。


「リーフ様のそばにいようと、
 おもいました、ですがリーフ様は、
 愛す人を守りにいって、私も後についていくから、
 貴方のほうが私より足が速いでしょう、?
 本当に好きな人を守れなければ私のガーディアンは
 させられないわよ、とおっしゃった。」

「え、?」

「貴方を、守りたかったのですよ、
 誰よりも」

「ラ、ランス、…、」

「愛しています、」


ランスの真剣な瞳に捉えられてしまった。
動けない、けれど涙がなぜか出てきてしまいそうだ。
命が助かったことが嬉しくて?
死にそうになったのが怖くて?

そうじゃない、

心の奥底でおもっていた、
ランス、



「みんな、!ユリ!
 無事ですかっ、遅れてしまって、」



ランスも私も家来も
凛と響いた澄んだ声に振り向いた。
お姉さまです。


「無事です、こちらのみかた全員、
 ランス様とユリ様がの活躍で、」



家来がひざまずいて言うとお姉さまはこちら見てやわらかく
笑いました。


「本当によかった、ありがとう、二人とも…、」


「いっ、いえ、お姉さま、私はたいしたことできなく、て」


「いいえ、
 貴方が国を守ってくれたのですね、
 ご褒美です、ランスと二人で海べにでもいってください。」

「え、?」

「ちゃんと話してできてないのでしょう?
 この件は私が片付けておきますから、
 ほらっ、」


お姉さまに背中を押された。
それでも、私は此処で動いていいのか、
わからなかった。
そんな私の手を、つかみ、

「一緒に海辺に来てもらえますか、?」

ランスはいいました。
私はこくりと、小さくうなずきました。


海辺に着た私たちは
とりあえず浜辺に座ろうとしました。
私が座ろうとすると、ランスは羽織っていたマントのようなものを
脱ぎ、砂の上にしき、この上に座ってください、といいました。

私は
「ありがとうございます、…!」

とお言葉に甘えさせてもらいました。



「あの、ランス、
 お姉さまのことが好きなのでは、なかったのですか?」

「リーフ様を、?
 そうですね、貴方のお姉さまはすばらしい方だと、
 思っています。ですが、私は、貴方に惚れてしまった。
 リーフ様のそばで、天真爛漫にけれど強い心を持った貴方に
 心を奪われたのです。」

「…」


ランスは私の頬に手を添えた。
その感覚にびくっと体を震わせてしまう。


「嫌、ですか、?」

「い、そうではなく、
 わたしなんかでいいのですかっ…
 本当に、私、なん、」

「貴方だからいいのです、
 貴方が以外は、みえません、もう、
 そのくらいに、貴方を愛しています。」

「、っ、すきです、
 本当は、ずっと」


(前から、ランスと一緒にいるお姉さまがうらやまかった)




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