マネネ!


(ごほんごほんっ)
(声まね好きな君にいってほしい
 言葉があるのです。)



ことの始まりはなんだったのだろうか、
あれは先月だっただろうか。
同室の女の子が、幹部の一人にときめいた。


「ねぇ、ね、ユリ!
 ランス様ってかっこいいよね!!!」
「へっ?」


拍子抜けな声を私はつい出してしまった。
だって、あの意地悪なランス様だ。
いや、でも、理解はできる。
容姿は端麗だし、女の子に人気あるし、
ロケット団1,2を争うかっこよさ、
らしい、からなあ。


「あの声がステキ!
 低すぎず、でも高くなくて、…
 かっこいい!!」
「んー、あっ、それじゃあ、め、瞑って!」
「え?」


彼女は私にいわれるがままめをつむった。
よし、少しからかっちゃえ!
といういたずら心が私に目覚めた。
こころのなかで、ちょっとにやついてしまった。
深く息を吸って、彼女の耳元でつぶやいた。


「愛していますよ、ずっと前から、」


彼女は私の声を聞くなり
ぞくっと体を震わせた。
そしてすぐ眼を開き、
驚きの表情を見せた。


「、ランス様の声!?
 今のユリが!?」
「うん、似てた、?」
「似てたなんてモンじゃないよ、
 もう、本人かも!!」
「やったぁ、嬉しい!
 声真似とくいなんだ!」


彼女は私の手をとりぎゅっと握った。
心なしか眼がきらきら輝いてる。
わたしのてがちょっと痛い、


「ねっ、あれやって!
 私はロケット団1〜って」
「あっ、うんいいよ!
 任せて!」



私は彼女に背をむけ、
帽子を深くかぶる。
そして片手を腰に当て、
あのなんともいえない声をだす。


「私はロケット団で一番冷酷と呼ばれた男…
 私たちの仕事の邪魔などさせませんよ!」


私を見ていた彼女は口に手を当て
ふるふる震えながら、
うつむいていた。
と、おもっていたらいきなり笑い出しだ。



「っ、ふっ、あはははっ、!!
 似てる!それ、似てるよユリ!!」
「あっ、あは、!わたしもっ、あっははっ
 自分でいっててわらっちゃう…!!はははっ!」
「だってさ、これって、」



「「自称冷酷〜ってやつだよねっ、!!!」」



私たちはむかいあって、おなかを抱えて笑った。
女の子特有の高い笑い声が部屋に響く。



「じゃじゃ、アポロさんは、!?」


「私たちロケット団は、
 サカキ様を見つけるために、ここにまた
 復活するのですよ。」


「っ、あはははっ似てる!!!
 やばい、最高、っ!!」





ああ、あのときの出来事がきっかけだったか。
とあのときの回想を終えた。
私は書類運びのためにアジトの廊下を歩いていた。
あれからというもの、
私の声真似が広まっちゃったようで
下っ端の女の子達に良く頼まれるようになった。
でも、このことでともだちも増えて、ちょっと嬉しい、
そんな風におもっていた。
ら、またほら、きたみたいだ。



「ユリー!あっ、ごめん、お仕事中?」
「えっ、いいよいいよ、どうしたの?」
「ランス様の声で、
 私はべつに、貴方のことすきなんかではないんですからね!
 って、いってほしいの!」
「うん、!任せて!」



こういう注文は今までにもたくさん来た。
一部には、「ランス、愛していますよ」
と、アポロ様の声で言ってほしい!
なんて注文もあった。
私はごほんと、咳払いをして、
セリフを言う。



「私は別に貴方のことを好きなわけではないんですからね!」
「っかっこいい!!
 じゃあ、最後にお決まりのあれも!!」


もう、あれといわれるだけでわかるようになってしまった。
嫌って言うほど、した物まね。


「私はロケット団1冷酷と呼ばれた男…
 私たちの邪魔はさせませんよ!」



ポーズもお手の物だった。
「すっごい、似てる!
 あ……」
といった彼女の顔が青ざめてるのがわかった。
わたしは「え?」といって
後ろ向いた。



「ぎゃっ、ランス様……!?」



全身の血のけがひいていくのがわかる。
自然と足が後ずさりをした。
そんな私の体を、がっとつかんだ。


「ユリ、こんなまねしてどうなってるかわかってるんですか?」

「あ、あの、それは、
 その、」



ここで、アポロ様の真似をして
「まぁ、許してあげなさい、ランス」
っていいたかった。
でもそんな勇気、あいにく持ち合わせていない。
ランス様がつかんでいる、肩が痛い。



「今晩、私の部屋に来なさい。
 バツとして仕事を与えましょう、」



そういって、パッと離された
からだを足で踏みとどまる。
ランス様が廊下の奥に消えていったころ
さっきの女の子が私に必死に謝ってきた。
大丈夫、と元気に返事をして私は
書類を届けた。





____





「失礼しまーす、…」


コンコンとノックをして
ランス様の部屋に入る。
視界に移るのは、ぴしっと整理されていた部屋。
幹部の部屋なんて、初めて入った
その関心を興味として態度に出してしまったのだろうか。



「何、じろじろ見てるんですか、」

「す、みません、!!」

「声真似が得意だとか、?
 それで私のまねをしていたんですね、」

「は、い、。」

「ほう、
 では、私の前で私の物まねを
 もう一度してもらえますか?」

「え、?」



予想外の言葉、だ。
本人の前で物まね?
ただいま、緊張でのどがからからで声が出るかわからないのに、
すっと息をのんだ。


「私は、ロケット団で一番冷酷と呼ばれた男…
 私たちの仕事の邪魔などさせませんよ!」


ああ、よくわからない達成感と不安に襲われる。
ランスさんの目的はなんだというんだ。
疑問が脳にめぐる。



「似てますね、まぁ、
 この能力何か使えるかもしれませんね」


「は、はぁ」




「では、仕事を
 バツとして与えましょうか。」


「はっ、はい!」



何が来るんだ、
と心で身構えた。



「貴方の声で、私にすきだと、
 いってもらえませんか?」


…頭が真っ白になった。
何言ってるんだろう、このお方は、
私の耳が悪くなっちゃったのか、な


「も、もう一度、いって、」


「聞こえなかったんですか?
 それとも聞こえないふりですか?」


「し、信じられない、だけで、」


信じろというほうが無理だ。
無理度5000パーセントだよ、
頭の中でそういってしまった。



「じゃあ、言い換えますよ。
 貴方が好きです、ユリ。
 返事をお聞かせ願えませんか?」



まって、
まって、なに、何を言っているの、よ、

頭の中で、片言にランス様の言葉がリピートされる。

言い換え、好き、返事?

ぼっと、赤くなった。
顔が熱い。

ランス様の瞳が私を捉えている。
私はうまく、ランス様を見れないというのに、



ランス様の手は私の頬に、
のびる。


「ぎゃっ、なにする、んですか?」


やっとのことで出た言葉が、
これだった。
とん、壁に私の背がぶつかる。
いつのまにか、後ずさってたのか、


「嫌、ですか?」
「冗、談を、。」
「冗談?まさか、そんな冗談言っても
 楽しくないですよ。
 私を選んでくれませんか、」


ランス様の顔が近い。
整った顔をしておられる…!!
改めて認識した。
瞳も、ペリドットを溶かしたような瞳だ。
その瞳に赤く困惑している私が写っている。


「好き、になりそう、
 です。今は、それしかいえません。
 私、こういうの慣れてなくて、
 はずかしい、です、とりあえず、
 もっと、ランス様の、こと知りたい、。」
「……いい答えですね、
 では今日から私専属の秘書にしましょうか。」
「は、い!」



(貴方に惚れるまで、)
(あと、3日。)







- 4 -


[*前] | [次#]
ページ:




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -