正義はまた別に。


ああ、痛い痛い痛い、
血がにじむ、胸の下がずきずき疼く。
私のポケモンも相当な傷を負っている。
もしかしたら、モンスターボールの中で、…
死んでしまっている、?
そんな不安もよぎった。
ちょうど胸のした辺り。
一発、弾丸が入ってる、
意識が切れそう、だ
でも、まだ、此処で倒れるわけにはいかないの、
私の体、お願いよ、もう少しだけ、耐えて。


「っあ、いた、」


書類が汚れたらどうしよう。
ランス様に届ける前に、
私の血で汚すなんて真っ平だ、
胸の下からとめどなく出てくる血を
手で押さえて、
私の足、もうちょっと、お願い
歩いて、歩いて、


「あ、じ、」


アジト、だ。
慣れ親しんだ、アジトがかすむ。
意識が飛びそうだ。
あとちょっと、後もう少し
アジトの建物に入ったとき、
胸の下が酷く痛んだ。
此処に着いた、その安心が
私の緊張の糸を解いてしまったのか。
もう、歩けない、


私が入ってきたとき、
近くにいた、下っ端同士の私のお友達と、
大好きなアテナ様が、私に駆け寄ってきた。


「どうしたんだ、その怪我!?」
「どこへいってきたの!?」
「はやく、手当てよ!!医務室に!!!」
アテナ様が叫べば、下っ端は動き始めてくれたけど
そうも行かない。
私が頼まれた任務は、
「書類を取ってきてランス様にとどけること」
任務は、正確、に。
ちゃんと、届けなきゃ。


「アテ、ナ、様、これを、」


私は片手で胸の下を押さえ、
片手で書類をアテナ様に渡した。


「これ、ユリ、あなた、とってきたの、!?」
「ランスさ、ま、にとど、け」



朦朧とした意識の中、アテナ様は涙を流しているように見えた。
ああ、幻?アテナ様は、叫んだ。
もう一度、声を張り上げた。


「ランスを呼んできなさいっ!!!!!」


ああ、この声は、泣いている?
アテナ様、泣いているの、?
そのあと、ばたばたといろんな足音が
私の耳に入った。
見える。
なぜかはっきり、みえる。
目の前にいるのは、


「ラン、ス、様、?」
「貴方は、」


ランス様が私の目の前にいる。
ああ、死ぬ前に、会えた。
アテナ様が書類をランス様に差し出す。
そうすれば、ランス様もものすごく驚いたような、
なんともいえない表情を浮かべた。
ランス様のそんな顔、初めて見ました。


「この書類、貴方が、?」
「は、い。だいじょう、ぶ、ですか?
 汚れて、いませんか、?」
「そんなことより、貴方、
 怪我、その怪我っ…は、」
「すみませ、すこし、とっ、て、
 逃げ、てくるとき、に、撃たれ、」
「…っ、どうしてそこまでして、止めればよかったじゃないですか」
「…わた、しは、貴方のおや、くに、たてる、それだけで
 よかったの、で、す。私の命なんかより、よほ、ど、そ、」
「…ユリ、ユリ、!?」
そこで意識が途切れた。
ふわふわ浮いたような、よくわかんないかんかくにおそわれた。
私、死ぬんだね、
そうわかった。
ああ、最後に貴方の顔が見れた。
嬉しくて、つい、泣いてしまった。




__



「これ、は、」

アポロの声が脳に響く。
アポロは玄関は見てすこし動揺したようだ。
あの子の血の色の玄関。
あのこは、今医務室で手当てを受けている。

「アポロ、私は、あんたを絶対恨む、
 あの子が死んだら、一生許さないからね、」


私、泣きながら強いまなざしで
アポロをにらみあげた。
、あのこ、死ぬの?
最後まで、あの子はランスのために、
尽くしていた、


前からよく話していたけれど、
あのこにランスの話題をふったのは一度きりだ。
「貴方はランスの部下で辛くないの?」
そう、私が言えば、
彼女はきょとんとした顔をになって
それから笑顔を浮かべていった。
「私は、あまり仕事を上手くできません、
 早くやろうとすれば失敗するし、
 丁寧にすれば遅くなっちゃうんです。
 けれど、ランスさんのお役に立ちたい。
 いちどでいいから、そう思っています。」
彼女の笑顔は白百合のように、
美しく、けなげだった。



「アテナ、私は9割がた
 ユリは任務を成功し戻ってくると
 確信していましたよ、
 むしろ、彼女にしかできない、と。
 そうおもっていました。
 今言えば、言い訳にしか聞こえないと
 おもいますが、」


静かに、アポロは、血をふきながらいった。
そのときのアポロの心境がどんなものか
私は、わからなかったし、
知ったことじゃない、とおもった。
彼女を傷つけた。
その事実は変わらないのよ。


「なぜ、捨て駒といったでしょ?」


「彼女は、ランスのために尽くしていた、
 誰よりも、ランスのために役に立ちたいと
 ほかの何を捨てても、ランスのために。
 そうおもっている人間は、
 とんだ、すごいことをしでかすのですよ。」


「…ユリは、
 死ぬかもしれないのよっ!!
 あんたそれで、も、最高幹部!?
 部下と任務どっちが大切なのよ!」


アポロの胸元をぐっと引っ張りあげて
叫んだ。
アジト全体に聞こえるんじゃないかと、
自分でもおもった。



「そうよ、あのこはっ、
 ランスのためだけに、…!!
 ランスは、でも、
 事実上幹部はあの子を捨てた、!
 あんたはそんなに任務遂行が大切!?」



アポロはいたって冷静だった。



「私は、部下が大切ですよ。
 知っているでしょう?
 ランスが最近から回りばかりしていたのを、
 ランスは名誉も地位もかねもすべて、
 てにいれようとしていた、その考えでは
 駄目なことを教えるには、
 彼女の任務成功を見せることが
 一番の方法だった。
 ランスはあのままじゃつぶれてしまうところだったのですよ。
 あなたは、ランスを捨てますか?」


「っく、…」



言葉が詰まった。
アポロをつかんでいた手が力なく
崩れた。
納得いかない、
だって貴方は、


「ユリを捨てたことには変わらない、…っ!」

「捨ててなどいない、
 難易度の高い、任務でしたが、
 彼女にしかできない仕事だった。
 それを任せただけ、
 彼女はそしていっそう、強くなったとおもいます。
 彼女は、この任務を受けたことに、
 不満を言うとおもいますか?」

「おもわないっ、けれど、
 でも、」


駄目だ。
アポロのいうことは正論だ。
けど、で正論に押しつぶされてしまう。
そんな、こともあるのに。



(彼は、
 ただしかった、
 正義だった。)

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