ひとつ。


(何もかもほしい。)
(馬鹿ですね、愚かです)




私は何もかもほしかった。
名誉も地位もお金も、ロケット団を復活させる力も。
すべてすべて、



「ランス、空回りしすぎてやいませんか、」



ある日、最高幹部にいわれた言葉。
理解できなかったわけじゃない
自覚してなかったわけじゃない、
どんな任務も、職務も
どんなに一生懸命にやったって
結果がついてこなかった私に、
アポロはいったのだ。
空回り、自覚したくないことだ。



「そうですか、?すべてを手に入れるため 
 努力は怠らない。、今は調子が悪いだけです。」
「すべてを手に入れるなど、
 不可能ですよ、ランス。」
「不可能?
 笑わせないでくださいよ、
 不可能だとおもうから、
 不可能になってしまうだけ。」



不可能、そうかもしれない。
心ではそうおもっていてもああ言ったのは、
認めたくないからだ。
最高幹部様は、ひとつため息をついて
私に書類を手渡して言う。



「ほしいものがあるなら、
 そのほかすべてを切り捨てる気でいなさい。」



アポロはそれだけ言うと、
私の前から立ち去った。
理解できない、
そのほかすべてを捨てる?
じゃあ、金のために名誉を捨てろというのか。
そんなの悪循環だ、矛盾じゃないか。


そうおもって仕事をしても、
ポケモンを鍛えても、
どうしても。
私は、何も手に入れられなかった。
何一つ、変わらなかった。
相変わらず、幹部の中では一番弱かったし、
それどころか苛々して、部下に当たることもしばしば。



ああ、いらつく。



そんなある日、任務が来た。
至極難しい、任務。

幹部でさえ、絶対無理だろうとおもわれたほどだ。
ある組織にもぐりこんで、
ある情報資料をぬすむ。



幹部の会議で、アポロが
口を開いた。



「さて、この任務、
 ランスの部下のユリにでもやってもらいましょうか、」
「?何考えてるのよ、アポロ、正気?」


アテナがすぐさま意見した、
当然だ。ユリは仕事ができない。
出来ないというより、とろいのだ。
現場は向いていない、せいぜいどうでもいい書類整理を押しつけられる程度で。


「アポロ、ユリは仕事出来ませんよ」
「分かっていますよ、捨て駒です」
「は、」


アポロの言葉に思わず、声を漏らした。捨て駒??いやいや、部下思いのアポロが、捨て駒?


「何、言ってるのよ!?アポロ!」
「…アテナ、ラムダ、ランス、よく聞きなさい。
今回の任務は私達全員で挑めば成功するかもしれない、そんな任務です。
成功するかも、なんて曖昧な可能性にあなた方を私が犠牲には出来ませんよ。」
「だったら、任務なんてやらなきゃいいじゃない!」
「任務を遂行しないのは好ましくありません。いいじゃないですか、彼女は死んだって差し支えない」


ここにいる全員が息を飲んだ。
普段温厚なアポロが部下のことをあそこまで冷たくあしらったのだから、当然だ。
けれど、アポロは捨て駒にしたほうがいいと言った。なら、そうなのかもしれない。
私もアポロのように考えれば、アポロのようになれるだろうか。
名誉も、地位も皆、手に入れているアポロに。



そんな考えが私の脳裏をよぎった。



「いいんじゃないですか、ユリにやらせましょう」
「ランス、!?あんたまで…!?」


アテナがくってかかってきた。
アテナとユリはよく話していたところを見たような気がする、そういえば


「アテナ、貴方とユリは友だちでしたね。仕事に私情を挟むのですか?」


私が冷たく言う。
ぐっと彼女は言葉に詰まって、強く私を下からにらみ付けた後、座った。

「それじゃあ、いいですね、ランス、ユリに任務を伝えておきなさい」
「任せて下さい。」



その晩、彼女を呼びだして、任務を告げた。
彼女は一瞬驚いた顔をした。「こんな難しい任務を私に、?」まるでそんな顔。
だが、彼女はそんなこと口にしないで「承知しました」と言った。



「期待していますよ」



私はそう、

(嘘をついた)

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