なくか笑うかどっちかにしてもらえないだろうか。


ラジオ塔占拠失敗ー。
私達には何も残らなかった。アジトも誇りもプライドも部下も仲間も。
残ったのは目の前で泣いてるアポロの恋人だった人だけ、
アポロは死んだのだ。
警察にやられた。
ラジオ塔占拠もロケット団復活というのも、夢となり儚く散った。
誰もが信頼をおいた最高幹部もいなくなった。



「ユリさん、」

「な、に、何、ランス??」


彼女は笑顔を浮かべていた。
それが本当の笑顔じゃないことくらい、分かっていたのだけれど。


彼女は最高幹部の次に位の高い役職だった。
仕事の出来る女性だった。


「辛いですか、」

「ううん。だいじょーぶよ!さってと、どうしようかなあ。ロケット団も、解散しちゃったものねえ、」



へらへら、嘘っぱちの笑顔で彼女は笑っていた。
痛々しい、けれど美しいからげんき。
彼女がきづついてるのは分かっている。
けれど彼女はそんな素振りは見せない。
お涙ちょうだいもなければ、同情もいりはしないと、言わんばかりに笑っていた。


「ふふっ、あっさりおわっちゃったねえ、私達の夢。
ごめんね、ランス
私がしっかりしていなかったから、だよねえ。……」

「無理して、笑わないでください。笑うか泣くかどっちかにしてもらえませんか。」



私がズバリといえば彼女はバツが悪そうに顔をそらした。
彼女は先程から笑いながら、涙を流していたのだ。



「っ……」

「泣いてください。
つらいんでしょう」

「うっ、アポロォ……!
あ、アポロ、アポロッ…!」



彼女は泣き崩れた。
小砂利道にひざをついて、ぺたんと座り込んで
なきさけんでいた。先ほどまでの
笑顔の彼女はいなくなっていた。
けれどけれど、
へらへら笑う彼女より今は
泣き顔が痛々しいくらい美しくて
彼女の本当の感情をあらわしていた。



「うっ、アポッ……
 アポロ…」


彼女の前に腰を下ろして彼女を抱きしめる。
今は彼女の支えでも、なんでもにでも
なれれば。


「、ラン、
 アポロ、アポロッ……
 どうして、んで、先にっ……
 アポロ、…!!」


私の服を一生懸命握って、
辛さをぶつけて、
泣き叫ぶ貴方は


(アポロしか見えていないのですね)
(私も)


貴方をおもって、ないてしまいたい。


「アポロ……
 大好きだよ、大好き…!!
 っ、アポロ、」


(貴方はアポロしか呼ばないんですね。)

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