縄
自由奔放。
下っ端の下っ端のしがないまた下っ端の彼女は自由奔放としか言えなかった。
地位は下っ端の下っ端の下っ端なのに、上司には言葉遣いがなっていないし、書類整理を任せてもやらないったらやらないと決めて、仕事をろくにやらないのだ。
「いい加減にしないと辞めさしますよ。」
そう私が言えば、「いいですよ、別に」とさらっと言ってのけた。
だが、私が辞めさせないのは、彼女の現場での仕事振りには目を見張るものがあった。
ポケモンはこの上なく強い。そして、ランスの仕事に同行させた時は、ランスに殺すように頼んどいたターゲットを「これ、殺しとけばいいんですよね、ランス様」といいながらランスより先に殺していたらしい。
これにはランスさえも血の気がひいただとか、
彼女を昇進させようとすれば、「嫌です。」一言で断られた。何なんですか、お前は、
そう言わざるを得ない。
「あっ、アポロだ。
こんにちは!
こんなところでぼーっと
してるの、?」
噂をすれば、というものだ。彼女が先ほどから私が考え込んでいるそれ、だ。
「こんにちは、
ぼーっとじゃなく、
考えごとをしていたんです。」
「そう、」
「お前は考えごとなどをしないんですか。」
「しないよ、アポロは頑張るねぇ、」
頑張るねぇ、の真意は掴めなかったが、追求しても無駄なのだろう。
「お前は、
頑張らないのですか、」
「うん、!」
笑顔。満面のえみ。
彼女は頑張る気がないらしい。
「ユリ、私を殺すという任務があったら殺しますか」
「えー、そうだねぇ」
クスクス笑いながら、考える素振りを彼女は見せているがとうに彼女の中で答えなど、分かっているのだろうか。
「アポロは、?逆だったらどうします?」
「殺しませんよ、」
「本当、かなぁ」
未だに余裕そうにクスクス笑っている。
いつも余裕そうだ。
弱点などないのだろうか。
「私はね、任務なら殺さないよ、アポロはね。」
「、え」
意外な答えだった。
その答えは嬉しいものでもある。殺さない、というのだから。
「私は、人の支配下におかれてるのは嫌いよ。
人の任務を受けるのは嫌いじゃないけど、やりたくないものはやらない。
書類整理と同じ。」
「支配下、」
「うん、
誰にも縛られるのは嫌だよ。」
「じゃあ、誰かと付き合う、なんてこと、もってのほかですか」
「……アポロ、私と付き合いたいの、?」
「そうですね、好きですから、貴方のこと」
余裕ぶって言ってみたが、内心ビクビクしてしまった。
断られるだろう、
彼女はそういう人なのだ。
「ふふっ、いーよ、
付き合っても、」
「は、」
「良かったね、じゃまたねぇ、」
ヒラヒラと手のひらを泳がせて彼女は私のもとを歩きさっていった。
嬉しい、けれど
(彼女の真意は掴めない)
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