「アポロ、
 アポロ、どうして、っアポローーー!!!!」



私の叫びは音となり、空気の波となりむなしく散った。
ばたん、とアポロは白い壁の向こうに
消えていってしまった。
私はというと、真っ白い壁に、囲まれたこの部屋にポツリとおいてある、
拘束道具に拘束されていた。


アポロと私は幼いころから恋人同士だった。
私はアポロの隣にいるだけで幸せで、嬉しかった。
アポロがロケット団に入っても、
それを否定するつもりもなかった。
そばにいるだけでよかったのに、

アポロは私のポケモンを奪いここに私を拘束した。



「くっ、なんで、
 アポロ、」


頭にざーっとシネマのように
二人で過ごした日々がながれた。

色鮮やかに流れるそれは、
もう、死んでしまっている。
もう、あのころの彩りはとりもどせないのか、

空虚感だけが心にのこった。


「ふっ、う、」



ガシガシと腕につけられた拘束道具、
をはずそうと試みる。
痛い、痛い、痛い
けど、はずさなきゃ、


ガチャリ、とそのときドアが開いた。




「っ、うあ、アポロ
 、はずして、
 どうして、」

「ごめんなさい、」



違う違う、謝ってなんかほしいわけじゃないの。
私が聞いているのは、
どうしてこんなことをしているか


「どうして、どうして、」


そのとき、足元がひやりと冷たくなった。
下を見ると、水。
上を見ると水が流し込まれている。


「え、」

「愛しています、愛していますよユリ…」

「アポロ、まって、アポロ、!!!」


アポロはまたこの部屋から消えていった。
そしてこの水。
この部屋はアポロが入ってきたドアと
上のほうに窓ひとつ。しかも窓は閉まっている。
このまま流れこんできたら、
私は水死であろう。


「やだっ、こんなところで、」


アポロに理由を聞けずに死ぬの、なんて。
死ぬより辛い。
ううん、まさに今死ぬかもしれないところだけれど。


「くぅ、」


涙がこぼれそうだ。
だってからだではこんなに叫んでるのよ。
心の奥で、いまだ言葉にできない悲痛な叫びが。


きずけば、腰の辺りまで
水面が上がっていた。


「く、このままじゃ」


がん、がんっ
腕に大きく力を入れる。
いたい、痛い、
赤い液体が腕を伝った。

こうまでしても、
拘束道具は外れてくれなかった。

でも、あきらめるのは、嫌だ、
やだ、。


水面が口元まであがった。
顔を上に向けて必死に酸素をえろうとする。


「はっ、うっ」


苦しい、苦しい、苦しい
私、もう、駄目だ。



「#name!!大丈夫ですか、!?」


「え、?」


聞きなれた声。
ぼやける目で声の方向を向けば、
窓から入ってくる一人の男。

ランスが見えた。


ランスは泳いで私のところまできて
拘束道具を壊してくれた。
意識を飛び掛ってた私を
抱えて窓まで連れて行ってくれたのだ。
そこから、私を抱えてランスは飛び降りた。


「っ、大丈夫ですか?
 ユリっ、?!アポロがあんな行動に出るなんて
 思ってもいませんでしたから。」


「ランス、ランス、…
 ありがと、う」


「いえ、」



彼とは面識があった。
なんどかロケット団に入ったときに、
お話をした。

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