1.
私について話せることといえば、
人の手によって、人のカタチに顕現された刀の付喪神だということだ。
名もなく、号もなく、どこの誰ぞが所持していたのかも、打ったかもわからぬ、どこにでもある無銘の打刀だ。
無銘で由縁もない刀がこうして顕現するのは、まぁ珍しい方らしい。
だいたいこういうのは顕現したとしてもカタチを保てず消えたり、使い物にならずに審神者の手で再び解き放たれてしまうから。
だが、私の場合は偶々カタチを保て、意志を持ち、言葉の疎通も出来たものだから
そして何よりここの審神者が変わり者だから、そのままこの本丸に迎えられることになった。
そうしてここの審神者が変わり者だからかはわからないが、私は他の刀剣とは違う形(なり)で顕現してしまった。
「…ありゃ?」
「お…、女の子だ…!!!!」
ただただ、目と口を開けるしかない審神者と
サクラの花びらがよく映える白金色の彼が、私が最初に見た光景だった。
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