ただ祈るしかなく
 



息の詰まる空間。
心なしか体も重く感じるのは紛れもなく幽助から放たれる妖気が原因だ。

そして普段と違う幽助の言動。
そのものものしさに、あれ程威勢のよかった特防隊も動けずにいた。



「さて…目覚めのついでに
キサマらに俺の真の姿を見せてやろう。」


魔界へつながる穴からは、蔵馬達が戻ってくる気配はない。
このままでは…





「はーはっはっはっはっはっ…!!!!」














「この…っ阿呆!!!」







高笑いしていた幽助が吹っ飛ぶ。
突然の出来事に、コエンマさんと特防隊も開いた口が塞がらないようだが、そんなことは今はどうでもいい。


「遊んでいる暇があると思うな!!
状況わかってるのか?!!」

「おっ…まえ!
口より先に手ぇ出すの本当やめろよな!!」


ギャンギャンと突っかかってくる幽助にもう一発拳をお見舞いする。
覚醒のせいか、心なしか頑丈になった気がするがそれも今は構っていられない。

それよりも、蔵馬達が…



「ちょ…とりあえず二人とも、落ち着けい!」

いよいよ本格的に取っ組み合いを始めそうになる自分と幽助を止めるために、コエンマさんが割って入る。

それに何とか掴み合いが収まれば、周りからは安堵のため息が溢れる。


「…ごほん、兎も角だ。
魔界に行った仙水を追って、桑原達はこの境界トンネルを潜って行ったわけだが」

「あぁ、それもわかってる。
今のあいつらじゃ、ちとしんどいだろ。

プー。」


と、幽助の呼ぶ声にプーは大きな青い羽を広げる。
その背に幽助が飛び乗る。

と、そこへコエンマさんも飛び乗る。


「なっ?!コエンマ様?!!」

「ワシも行く!!」

予想外のコエンマさんの行動に特防隊は動揺を隠し切れない。


「なまえ、お前も…」

「俺は、ここに残ります。」


その言葉が想定外だったのか、コエンマさんは大きく目を見開く。


「ここで待ちます。そして…

二十四時間後に帰ってこなかった場合、特防隊と共に穴を塞ぎます。」


それを蔵馬に伝えてくれと言えば、何かを察したコエンマさんは、わかった。とそう一言返し
いよいよ幽助と共に境界トンネルを潜って行った。



そうして、その伝言が効いたのかは定かではないが
ボロボロの蔵馬達が帰ってきたのは、丁度日が昇りかける早朝だった。









ただ祈るしかなく fin.2018.3.22



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