市街地戦線
 




耳を劈く爆発音と閃光が辺りに広がる。
だが、くる筈の風圧も衝撃波も感じられない。


「っなまえ?!」


風に舞う赤い髪。

目の前には薄い青色の壁があった。


「ほぉ…調子は戻ったようだな。
いや、前にも増して霊力があがったか?」

すぅーっと音も無く青い壁は消えてゆく。


「いや…単純に怒ってるだけだ。」

とん、と軽く地を蹴る音と共にガン!と打撃音が連続的に響き渡る。

幽助の時はいなしていたものを、仙水は真っ向から受け止めている。
いや、正確にはいなせないのだろう。


「おや、約束通り君には関わらなかっただろう?」

「よく言う。
貴様、創造主と接触しているだろう。

だがそれよりも、俺が怒っているのは…俺自身にだ。」


幽助と桑原君は呆気にとられているうちに、二人は間合を取る。


「それは誤解だ。
俺は一度もその創造主とやらと接触はしていない。
ただ…今開こうとしている境界トンネルを彼が勝手に通っただけだ。

それに…それは八つ当たりというものだろ?」

「確かにそうだな。
だが、貴様が何と言おうと俺がお前を倒す。

それが、自分の弱さに逃げたケジメだ。」


そう言うと、黒い風がなまえを包むように吹き込む。
これは、暗黒武術会での…


「なまえ、それは駄目だ!」

そう制してもなまえは犬神と既に融合してしまっていた。


「俺を倒す…?
無理だよ、お前ごときの力じゃ。」

「ならば、試してみればいい。」

突然、風が吹き荒れる。
そしてそれは鋭い刃となり、仙水に襲いかかる。

駄目だ、これ以上体に負担をかければなまえは…



「てっめぇなまえ!!
そいつは俺の相手だ!!」

止めようと駆け出した途端、幽助がズカズカとなまえに近寄り怒鳴り上げる。


「そんなことを言ってる場合じゃないだろ!
お前、こいつのやろうとしてることがわかってるのか?!

今のお前じゃ仙水を倒すのは無理だ!」

「うっせぇ!!
んなもんやってみないとわかんねーだろ!!

とにかく、こいつは俺の獲物だ!
てめぇーにゃ渡さねぇ!!」


ぎゃんぎゃんと、仙水を前にして吠え合う二人。
すっと、仙水が構える。


「なまえ!幽助!!」


ドン!と爆発が再び起こる。
二人は…?!


「…お前は本当に阿呆だ。
奴の攻撃を防ぐ手段もないのに、どうやって倒すつもりだ。」

再び青い壁が仙水の攻撃を防ぐ。


「攻撃を防ぐ?バカ言ってんじゃねぇ。
やられるまえにやるに決まってんだろ。」

幽助の言葉になまえは、幽助の胸ぐらをつかむ。


「いい加減にしろ幽助!
お前も、相手と自分の力量の差がわからないほど阿呆じゃないだろ!

これはただの喧嘩じゃない、確実に仙水を殺さないと人間界は終わるんだぞ!!」

「いい加減にすんのはてめぇの方だろ!」

そう怒鳴り、幽助はなまえの胸倉を掴み上げる。


「てめぇが何に責任感じてるのか知んねーけどな、そうやってすぐに自分の命を懸けるのが気に食わねぇ。
その状態で戦えば、てめぇもただじゃ済まねぇんだろ?

仙水一人倒したところで境界トンネルが繋がるのは止められねぇ。
てめぇはここで無駄死にする気か?」

「無駄死になんかじゃない。
例え境界トンネルが開いたとしても、霊界がそれを塞ぐ。」

「それはお前が確実に仙水を殺せる前提だろ。
てめぇ一人じゃ仙水を倒せねぇ。
それはお前もわかってんだろ。」

幽助の言葉にピクリとなまえの眉が動く。


「それに…あんまり、蔵馬を心配させてやんなよ。」

幽助のその言葉に、なまえの黒い瞳と視線が交わる。
数秒の間の後、なまえは俯く。




「話しは…まとまったかな?」

「「?!」」


仙水に目を向ければ既に技を繰り出していたところだった。
ギリギリのところでなまえが結界を張り、攻撃を凌ぐ。

そしてその隙に幽助と桑原君が仙水に向かって突っ込む。


「「俺たちが相手だ!!」」

「阿呆!戻れ…!!」


なまえの制止を聞かず、交戦を始める二人。
が、簡単に仙水に弾かれてしまう。



桑原君の剣までも…
直線の動きでは仙水をとらえられない。
だが、俺のローズウィップなら奴の蹴撃を封じることができる!


鞭を出し、仙水に接近しようとしたその時、真横から車が突っ込んでくる。


そして窓から体を乗り出している男の指が伸び、瞬く間に桑原君を捕まえる。


「桑原!!」

「あれは戸愚呂兄の…!!」


鞭を伸ばすも既の所で避けられる。
そして幽助が霊丸を放つ。



「あーーーーしまったぁぁああ!!
手加減すんの忘れた!!」

「それじゃ桑原君もろとも車が吹っ飛んでしまう!」

「うぎーーーもーーーおせーーーー!!」

「…そうでもないかもしれない。」


なまえがそう言うと、霊丸は車にぶつかる前に仙水の技が相殺してしまう。

そして仙水は挑発するように手を振る。


「ヤロぉおお!!
待ちやがれクソガキがぁーーーー!!」

「待て幽助!!」


幽助は制止を聞かず、その辺にあった自転車で車を追いかけてしまった。


「…とにかく、今はこの場から退くしかないな。」

「あぁ、そうだな。」


増える人集りに急いでマンションへと向かった。









市街地戦線 fin.2015.06.21



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