禁句
 



時刻は夜の11時。
蔵馬たち4人は、指定された屋敷の前にいた。
扉の前に行くと、紙が貼られていた。


「なんだ?!このはり紙は...
『あつい』と言っちゃいけねェだと。一体どういうこった。」

「とにかく中に入ろう。気をつけて...。」


蔵馬の言葉に扉を開けると途端に、むしむしと暑い空気に包まれる。
ぼたんが思わず『あつい』と口にしようとしたところを蔵馬が口をふさいで制する。
そして蔵馬と飛影は妙な空間に違和感を感じる。



「ようこそ。」



そう言い本棚の影から、蔵馬と同じ学ランを着た眼鏡の男が現れる。



「あ!!あいつ!浦飯を呼びだした3人のうちの1人だ!」

「海藤...!!」

蔵馬がその人物を知っていることに桑原は驚く。



「高校の同級生と言う程度で親しくもない。
もちろん蔵馬(オレ)のことも、飛影や幽助や桑原君のことも話していない。」


それなのに何故自分達のことを知っているのか、蔵馬が海藤に問う。
すると海藤は"ある人"に教えてもらったと答える。
そして蔵馬を挑発するような言葉を口にするが、蔵馬はそれに対し何も言わず、無表情を返す。


「ほらその表情!こわいなー。
学校じゃ一度も見せたことないだろ。

俺も最近自分に妙な力があること発見してさぁ。
力試しっていうのかな...君たちに挑戦してみたくなったんだよ。」


相変わらず挑発的な海藤に飛影は剣を抜き斬りかかるが、見えない何かに弾かれ剣が折れてしまう。



「この部屋はね、言葉だけが力を持つ世界なんだよ。
この中では俺のルールを守って戦うしかないんだな君たちは。」


そして海藤は、自分の領域の中ではただのチビだと飛影を挑発する。
その挑発に対し蔵馬は飛影に制止の声をかけるが、それを無視して飛影は『あつい』と口にする。
その瞬間、飛影の体が光だし、飛影の中から何かが飛び出し、海藤の手に向かって飛んでいく。



「言ってはいけない事を言った人はね...
魂をとられちゃうの。俺の領域の中ではね。
これで"人質"が2人...いや、

3人になったな。」

海藤の言葉に蔵馬たちは目を見開く。



「ち、ちょいと待ちなよ!
捕まえたのは幽助だけじゃないのかい?!」

ぼたんの言葉に海藤はにやりと笑う。



「うっかり書き忘れてたんだけど...浦飯君以外にもう1人いるんだよね。
瞳と同じ、真っ赤で綺麗な魂だったなぁ...。」

「な...ま、まさか...。」


なまえ、と言おうとした桑原だったが隣りから感じる冷たい気に、その言葉を発することが出来なかった。



「...お前に勝てば、飛影の魂は元通りになるんだな。」

「...さぁねぇ〜。
負けたことないからわかんないな。
それにさっきも言ったけど、とった魂は飛影君だけじゃない。

あの赤い髪の子、大事な人なんじゃないの?
よく一緒にいるのを見かけるけど...。」

クラスの女子が結構騒いでるぜ。

そう言い海藤は眼鏡を中指でくいっと上げる。



蔵馬から発せられる空気にぼたんと桑原は冷や汗を流す。
今日一日、"なまえ"というワードを出した時の蔵馬の様子が何かおかしかったのだ。
連絡だって取れないんじゃなく、取らなかった。
この命知らずめが!と桑原は心の中で海藤に悪態をつく。



「...到底信じられる話しじゃないな。
だが、冗談にしてもそれは笑える冗談じゃない。」

「...。」


海藤も内心冷や汗を流す。
あの黒い犬の言った通りだった。これは南野にとって禁句だ。
クラスメイトの新たな一面の発見を面白く思いつつも、これ以上踏み込んではいけない。
そんな警報が頭の中で鳴り響いていた。










コチコチと、時計が時刻を刻む音だけが響く。
もう日付は変わっていた。
携帯のディスプレイを見ても師範からの連絡はない。
何かあれば犬神から知らせは来るはずだが...。
机に顔を伏せ、目をつぶる。



――――「俺はもう、長くないのか。」

「...何故そう思うんだ。」

兄の言葉に目を伏せる。
まるで走馬灯のようだと思った。
自分の今までを思い出させるような夢。

それを兄に伝えると、兄はふっと笑みをこぼす。


「きっかけはあいつの死体を創造主が回収しようとしたことだろうな。
俺も何年か前にそんな夢を見るようになった。

俺たちが普通の人間よりも寿命が短いのは変わらないが、まだ大丈夫だ。」――――



「"まだ大丈夫"...か。」

その呟きは誰も聞くこともなく、静寂にとけていった。









蔵馬は海藤の領域を破り、飛影・桑原・ぼたんの魂を取り返す。
そして次は、柳沢の命令で7つの階段から各々別々に2階を目指すことになる。
そして4人は同時に2階へ到着する。


「幽助?!」

「おめーら!」


幽助は拘束されているかと思いきや、ただ立っているだけだった。



「へたに近づくな!
こいつの能力は影(シャドー)!影を踏んだ相手の動きを封じることが出来るんだ!」

「そういうこと...でも次の相手は俺じゃない。
あんた達4人の中にいる。」

城戸の言葉に蔵馬たちは怪訝な表情を浮かべる。



「浦飯さん、あの4人の中に1人だけ"ニセ者"がいます。」









禁句 fin.2014.2.11



前へ 次へ

[ 72/88 ]

[back]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -