無力
 





―――おまえ もしかしてまだ


自分が死なないとでも思ってるんじゃないかね?――――





―――戸愚呂...幽助の本当の底力を見たいんだろ。手っ取り早い方法を教えてやるよ。



こいつの仲間を殺すことだな――――












80%の姿から100%の姿になった戸愚呂相手に、幽助はほとんど遊ばれている状態だった。


そんな幽助の元に、ぷーの体を借りた幻海が現れる。

この状況を打開する言葉を幽助に投げると思いきや
幻海から出た言葉はあまりにも残酷なものだった。


これに対して幽助は怒るが、逆に幻海に頭を殴られる。
そして再度言われる。"これがお前が首を突っ込んだ世界"なのだと...




幻海の言葉に、戸愚呂も最終手段としてそれを考えていたという。
そして戸愚呂は見定めるようになまえたちを見る。



「お前がいいな。」



そう言われ、指を差されたのは桑原だった。


「浦飯の力を引き出すため、つまりは俺のために...

死んでもらう。」

そう言い戸愚呂はゆっくりと近付いてくる。



戸愚呂を止めようと、全力で幽助は殴りかかるが軽くあしらわれる。
その間にも、戸愚呂の歩は進む。


蔵馬、飛影、桑原は向かってくる戸愚呂に構える。



そしてあと数メートルというところで、蔵馬は視界の端になびく赤色を捉える。



「なまえ!?」


なまえは自ら戸愚呂に近付いていく。
その行動にコエンマ達も焦りを隠せない。


「馬鹿野郎てめェ!!指名されたのは俺だろうがァ!!!
何やってんだ!!!」

桑原が思わず叫ぶがなまえの歩みは止まらない。



戸愚呂との距離1メートルというところで、お互い歩みを止め対峙する。



「...てっきり霊光波動はお前か、龍が継ぐと思っていたんだがね。」

「貴方はいつか訪れるこの日のために、あの時俺を生かし、兄さんに師範のことを...?」

なまえの深紅色の瞳が戸愚呂をうつす。



「お前達はただの小さな子供だった。
だが感じた。もう随分と長い間、戦いに身を置く者特有の"気"を。


だから、幻海のところにやれば、いずれ霊光波動拳を継承し、俺の前に現れると思っていた。」


まさか、こんな風に予想が外れるとは思っていなかったよ。



そう言いながら戸愚呂は龍の方に視線を向ける。


「...随分と、師範にご執心なんですね。」

「あれのもつ強さは認めていたよ。
おしゃべりもここまでだ。まずはお前からでいいのかい?

確かにお前の存在は、お前なら何とかしてくれるかもしれないという希望を、浦飯に持たせている可能性もあるからな。」


そう言い戸愚呂は拳を上げる。




「やめろーーーーーーーー!!!!!!」





バキィ!!!







幽助の叫びと打撃音が会場を木霊する。




戸愚呂が振り下ろした拳の反動で、なまえは蔵馬たちのところまで押し戻される。


「なまえ!!」

とっさに蔵馬がなまえの肩を支える。



「...言っただろう。俺に戸愚呂を破壊する力はないが、止める力はあると。」



なまえの言葉に戸愚呂は自分の拳を見やる。
インパクトの瞬間、なまえが張った結界は確かに壊した。
そして確実になまえに当てた感触はあったが、やつは無傷だ...



「...なるほど、結界を二重に張るとはやるねぇ。」

にやりと戸愚呂が笑う。



「だがしかし、このままずっと俺に殴られるつもりかい?
まさか、この会場の客全部を俺が喰いつくし、エネルギーが切れるまで耐えるつもりか?」

「...正義の味方なら、ここにいる会場全員を守ると言うんだろうが、俺はそんなんじゃない。

でも、例え幽助の力を引き出し貴方を倒すためだとしても、絶対にこの人たちを殺させたりはしない。」
どんな手を使ってでも...


そう言い再びなまえは戸愚呂に向けて歩を進める。
しかしそれは、肩に当てられた手によって制される。






「...桑原?」

「俺一人で良い。」

桑原の言葉になまえは目を見開く。


「桑原君何を...?!みすみす殺される気か!!」

桑原を止めようとした蔵馬も、桑原の表情を見て何かを感じる。


「なまえ、てめェたまには俺たちに任せろよ。
いっつも危ない橋を渡る時は先陣切りやがって...

コエンマ。あんた浦飯に命賭けてくれたな。
俺も賭けるぜ。しけた命だが...


根が負けず嫌いでな!!!」


そう言い桑原は思いっきり地を蹴り戸愚呂へ突っ込んでいく。



































崩れ落ちる桑原を蔵馬が支える。

その向こうには悲壮な顔をした幽助が見える。



自分はなんのためにここにいるんだ。
全然...全然止められていないじゃないか。
結局、何も守れていない。







桑原が殺されたことで幽助の"気"に変化が起きる。
そして混乱していた霊気の迷いが晴れ、今までにない力を発揮する。


これなら戸愚呂に勝てる。
でも勝ったところできっと、後悔しか残らないだろう...





会場中が幽助の勝利を望む中、ついに決着がつく。


幽助の全てをかけた霊丸と、全てを捨ててきた戸愚呂の100%の力がぶつかり合い、戸愚呂は100%を超えた歪みで身体がボロボロと壊れていく。


幽助も全ての力を出し切りその場に倒れる。

相討ちかと思われたが、幽助は立ち上がる。










司会2人によって高らかに幽助の勝利が宣言された。










無力 fin.2013.12.15



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