死招き草
 





「あまりしゃべらない方がいい...もう勝負はついた。
俺の呪縛に使っている妖気を解いて、自分の傷の治癒に向けないと危険だぞ。」


蔵馬の言葉に画魔は不敵な笑みを浮かべ、血まみれの体で拳を振う。



「うあぁあ!」

「よせ!!無理に動けば本当に死ぬぞ!!」




蔵馬の制止も聞かず、なおも画魔は拳を振り続ける。

まるで芸術家が一心不乱に筆を振り上げるように。




(妙だ...何か狙いがあるとしか思えない。)

なまえは目を細め、画魔の様子を見る。




画魔はとうとう力尽き、血飛沫をあげながら倒れる。



「...もう二度と立てないだろう。」

蔵馬は画魔の無残な散り方に目を伏せる。



しかし、画魔は不気味な笑い声を静かに立てる。



「封じた...。」


画魔の言葉になまえはハッとする。

蔵馬の衣装に画魔の返り血が、何かの模様となっている。



「念縛封呪の粧。あんたの妖気は完全に封じたぜ。

これが忍びよ...先の勝利のために死を選ぶ。」



俺が死んでも10分は妖気は消えない。次の相手をかわせるかな...




その言葉を残し、画魔の命は尽きた。



「しまった...!

手足は鉛のように重くて思い通りに動かない...
その上妖気まで封じられるとはうかつだった!!」



「次鋒!呪氷使い凍矢!」



次の対戦相手がリングに上がる。



「ひとつ教えてくれ。なぜ最強の忍とよばれる君たちがこの戦いに参加したんだ?」


蔵馬の問いに凍矢は光だと答える。

そしていずれは自分たち自身がこの世界を覆う光となると。



「おしゃべりはここまでだ。画魔が命と引き換えに作ってくれた時間、無駄にできない。」

そう言い凍矢は氷の結界をリングに張る。



「随分と念入りなんだな。」

「お前は頭が切れる...しかも用心深く、奥の手をいくつも隠している。

近付くのは危険とみた...撃ち殺すことにしよう!」


そう言い凍矢の手の中にいくつもの氷の結晶が出来る。


「魔笛霰弾射!!」

笛のような音とともに、凍矢の手から氷の結晶が勢いよく放たれる。



「ぐっ!!」

「蔵馬...っ!!」


無数の氷の結晶が蔵馬を掠める。


しかし、凍矢は容赦なく氷の結晶を新たに放ち、かろうじて蔵馬はその攻撃を避ける。



(まずい...!妖気なしで戦える相手じゃない!)

どんどん傷ついていく蔵馬を見て、なまえに焦りの色が見える。


(こんな時に何もできないなんて...っ)

恐らく重傷で戻ってきた蔵馬の治療さえも出来ない。

言いようのない歯がゆさに、なまえは拳を握りしめる。




蔵馬は凍矢の攻撃を避けながら、呪縛を解く方法を考える。


(...!この呪縛が血の化粧で作られているなら...)

蔵馬は胸元を開け、自分の血で画魔の化粧水を拭う。



「血で血を洗うか...考えたな。
だが無駄だ。そんなことで呪縛が消える程度の使い手じゃないよ、画魔は。」

戦ったお前が一番よくわかっているだろう?


再び凍矢の攻撃が蔵馬を襲う。


「ダウン!!カウントを取ります!」



(妖気を外に出せない...?
そうか...あったぞ、妖気を使う方法がたった一つ...。)

蔵馬はこの状況を打破する方法を考えつき、立ち上がる。



「...お前は恐ろしい奴だ。俺が狙った急所をその体で全て避けている。

避けながら俺に勝つ方法を考えている。」



蔵馬は凍矢に再び問う、表の世界に出てなにをするのかと。

その問いに凍矢は答えるが、呪縛がそろそろ切れる時間であることに気づく。


そして、右手に氷の刃を造り出す。







ザシュッ





氷の刃が蔵馬に到達する前に、植物が凍矢の体を貫いていた。




「傷口から植物が...?!お前...自分の体にシマネキ草の種を...!!」

「妖気が封じられて外に出せないなら、体の中を使うしかないだろう。」


凍矢はそのままリングに倒れる。

立ち上がろうとするも、カウントは進み、蔵馬がこの戦いを制する。




「蔵馬もういい!!戻ってこい!!あとは俺がやる!!!」

幽助は蔵馬にむかってそう叫ぶ。


しかし蔵馬は凍矢と一言二言話した後、その場で力尽きる。




「蔵馬ァーーーーーー!!!」

幽助の声を聞きながらも、なまえにはそれがどこか遠くで聞こえているように感じた。








死招き草 fin.2013.8.11



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