踊らされる人間
 





翌日、なまえは日課の座禅を終わらせ大会会場へと向かう。



その途中、幽助たち、そして人間界ヴァージョンのコエンマと会う。





「おぉ、なまえ久しぶりだな。」


「お久しぶりです。護衛も付けずにこんなところに来て大丈夫なんですか?」


「ワシを襲ってもなんも得にならんからな。」

それにいざというときは、お前たちに頼るつもりだ。




そんな人任せなコエンマになまえはため息をつく。



そしてコエンマと別れ、試合会場へと再び足を運ぶ。












「おい!ありゃどーゆーことだ!

両チームとも人数が足りねーぞ!!」






「こいつぁ驚いた!あいつら全部夢の中に出てきた奴そのまんまだぜ!!」


桑原は今朝妙な夢を見たという。


そして相手チームのイチガキは4対4での戦いを提案する。





「人間は実に楽しい研究対象(オモチャ)じゃよ。

ワシの夢は最強の生物兵器を創ること!!我が意のままに動く、完璧な殺戮マシン!!」



イチガキの言葉になまえは不快感を覚える。

そしてまた、イチガキが合成獣の創作に関わっていたのではないかという疑念が生まれる。




「ワシらが勝ったらキミらの肉体をいただきたい。
むろん、死体でもかまわんよ。ワシが脳みそを作ってやるからの。」


そんなイチガキの言葉に、幽助は自分たちが勝ったらお前を殺すと宣言する。






「こちらからもひとつ提案がある。
この試合、8人バトル...つまり1回でケリをつけたい。」

そう覆面の人物は提案する。



すると、イチガキはしばし考えたのちその提案を快諾した。






「あの4人には見覚えがある。」

覆面の言葉に3人はそちらに視線を向ける。



「ある高名な武術家の愛弟子だ。
心から師を尊敬し、修行に励んでいた心身ともに強い者たちだ...。」


覆面の言葉に桑原は、この4人が自分の意思で戦っているのではないことに気づく。


なまえは覆面の人物、もとい幻海と目を合わせる。






「始め!!」

司会の言葉とともに、4人が先制攻撃を仕掛けてくる。



しかし、幽助と桑原は自分たちが相手の霊気が見えていないことに気づいていない。



「後ろへ飛べ!!」


覆面の言葉に2人は後ろに飛ぶが、ひげを生やした三つ編みの男に、見えない何かに薙ぎ飛ばされる。


そこへ黒髪を後ろで結んだ男が同じく見えない何かを投げる。




それをなまえが刀で弾き返す。



幽助と桑原は相手の霊気が見えない絶対的不利な状況に加え、相手の絶妙なコンビネーションに翻弄される。



そして体制を崩した幽助に向かって、4人の中でも肉弾戦を得意としているであろう男の技が放たれようとする。


そこへ覆面の人物が幽助を蹴り飛ばし、代わりに自分が攻撃を受ける。




(師範!!)



少し気が逸れたなまえに向かって、相手チームの中で唯一霊気を見せている少年が、腕の輪を複数投げつける。



それを間一髪で避けるが、今度はひげの男からの攻撃が襲いかかる。



(くそっ...反撃するヒマがない!)

なまえは自分に襲いかかる攻撃を弾くのに手がいっぱいだった。





「くそぉ!目ぇ覚ませ!!オメーら自身が望んだ戦いじゃねーんだろ!!」

桑原も幽助もただ操られて戦っているだけの人間相手に本気が出せなかった。






このままでは埒が明かない。

そう思い、なまえは拳と両足に霊気を集中させ、肉弾戦に持ち込もうとする。




それを察した相手方2人がなまえに向かって攻撃を仕掛けてくる。


それを交わし、なまえは相手に拳を入れる。




しかし、その寸前でなまえは思いっきり後ろへ飛び引いた。




「なまえ?!」

なまえの不自然な動きに幽助が声をかける。





(こんなときに...!!)

なまえの目は、先ほど見えていた相手チームの霊気が見えなくなっていた。


その隙を見逃すはずもなく、相手チームが一斉になまえに攻撃を仕掛ける。





なまえは戦いの中で掴んだ感覚を頼りに、相手の見えない霊気を避ける。


しかし、その中の一発がなまえの右足にヒットする。


「...っ。」


「なまえ!!」



幽助と桑原が加勢しに行くが、やはり相手チームの思うままに攻撃されてしまう。




そんな中、復活した覆面の人物が相手チームに蹴りを入れ、距離をとる。



「なにを迷ってんだ馬鹿どもが。
手加減してお前たちが負けて死ねば、奴らが救われるってのか?」

覆面をとった幻海は若い女の姿をしていた。




「なまえ、大丈夫か?」

幻海はなまえに声をかける。



「..."時間"みたいです。」

「霊気は使えないか...仕方ないな。あとはなんとかする。」




そう言い幻海は敵を静かに見据える。









踊らされる人間 fin.2013.8.9



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