リーゼントの憂鬱
蔵馬が薔薇を武器化したことで、部屋中が薔薇の香りでいっぱいになる。
「くくく、馬鹿め...。どこから攻撃するかわからない相手にムチなど振り回す余裕があると思うのか。」
「そう思うならば、どこからでもどうぞ。」
そう言い蔵馬は目を閉じる。
「...。」
「...!上か!!」
すると玄武は上から現れる。
「臭いか...。」
「臭い?」
「薔薇の香りで洗われたこの部屋では、玄武の妖気はひどく臭う...。
蔵馬はそれが狙いだったんだろう。」
すると幽助はすんすんと、部屋のに匂いを嗅ぐが何もわからなかったんだろう。
意味がわからないという顔をしてきた。
「とらえた!あの鞭についている棘は鉄をも切り裂く研ぎ澄まされた刃だ!」
飛影の言葉通り、蔵馬は鞭で玄武をバラバラに切り刻む。
「やったぜ!一撃でやられたのは玄武の方だ!」
「なーんでぇ、あのヤロォ。まるで弱いじゃねぇか!」
そんな桑原に飛影は釘をさす。
そして再び二人の間に亀裂が走る。
「こら、おめーらいい加減にしねーとまとめるぞ。」
「そうだ、先を急ごう。...!」
「...どうやらまだみたいだな。」
バラバラになったはずの玄武の体が元に戻っていく。
「あの野郎、斬っても元に戻りやがる!!まさか不死身かぁ?!」
「元に戻るどころか自ら分裂することもできるぞ。」
そう言い、本当に体を先ほどのように分裂させて蔵馬に襲いかかる。
「ちぃっ」
蔵馬は鞭を振い再びバラバラに刻むが、またもや玄武は元に戻り、攻撃を繰り返してくる。
その攻撃を避けながらも、蔵馬の瞳は何かをとらえる。
そして、玄武の攻撃を避けずに真っ向から受け止める。
「蔵馬!?なんで避けねえ!!」
「いや、なにか見つけたんだ。」
わずかだが、何かを掴むようなモーションがあった。
「う!」
しかし、蔵馬は痛みで膝をつく。
「とうとう最後の力も使い果たしたようだな。」
そんな言葉に蔵馬はくくっと喉元で笑う。
「「「!!」」」
「こ、これはぁ?!」
玄武の体は再生したが、腕や顔が無残にもチグハグな場所にくっついていた。
その玄武のあられもない姿に幽助と桑原は大爆笑していた。
そして蔵馬の手には恐らく玄武の核であろう石が握られていた。
「これがバラバラになった体を元に戻す中枢岩ですね。
たくみに俺の目から隠してはいたが、隠そうとするものを見つけるのは得意なんだ。
本業は盗賊だからね。」
「あぁあ!!ま、待て!!それを傷つけるなぁ!!!」
そんな玄武の叫びに答えるはずもなく、蔵馬は迷いなくその岩を真っ二つにした。
それと同時に玄武は跡形もなく消えていった。
「やったぜ!ざまーみろ!!」
と幽助と桑原は喜んでいるが、蔵馬が痛みで再び膝まつく。
「あっ、蔵馬!!」
「...蔵馬にこれほどの深手を負わせるとは...。」
「大丈夫...少し痛むだけだ。」
少し痛む、なんてほどの出血の量じゃない。
蔵馬の前に膝をつき、傷口に霊気を当てようとするが、蔵馬に腕を掴まれ止められる。
「ダメだ。この先何があるかわからない。
こんなところで霊力の無駄遣いをしてはいけない。」
(変なところで頑固だな...。)
「じゃあせめて止血だけでもさせてくれ...血の匂いは好かん。」
「そうだぜ蔵馬!どうせなまえはこの先闘わねえよ...面倒事は全部俺に押し付けてくるからな。」
あの半月の修行のことをまだ根に持っているらしい。
...確かに屋敷の掃除とかは全部押し付けたけども。
「半月の修行で随分と幽助と仲良くなったみたいだね。」
「仲良くか...一方的に煽られてるだけだけどな。」
もう少しで止血が完了するな...ついでに炎症も抑えるか。
そんな事を考え、霊気を少し強める。
「...ちょっと妬けちゃうな。」
蔵馬の言葉に桑原は盛大にむせ込んだ。
「いや、ちゃんと加減してるから焼きはしないよ。」
「おめぇ、そりゃ"やき"違いだばーか。」
これだからお子様は...と幽助に馬鹿にされる。
なんだか癪に障ったので、その辺に転がってた小石を幽助のデコめがけてはじくと、幽助は見事に背中から倒れた。
そんな様子を見て、蔵馬はクスクスと笑う。
(おいおいおいおい、蔵馬もそっちの気があるのかよ。)
和やかな雰囲気の中、桑原だけが頭を抱えていた。
リーゼントの憂鬱 fin.2013.7.21
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