また一難
霊光波動拳継承者の選考会に紛れ込み、その奥義を自分のものにし、人間に危害を加えようとしていた妖怪・乱童。
その乱童の野望を阻止し、見事霊光波動拳継承者になった幽助。
それからは、幻海師範のもとで厳しい修行を積んでいた。
「やってられっかくそババァーーーーーーーーーーーーぁ!!!!!」
(またか...。)
そしてなまえはおもむろに耳を塞ぐ。
ドガシャ―――――ン!!!!!
「それで、最近街に降りてきてるんですか。」
「この頃1日1回は破壊音が鳴り響くからな...。
落ち着いて家にいれない。」
ズズズーッとオレンジジュースをストローで吸う。
心なしかその顔はゲッソリしていた。
今、なまえは蔵馬とファミレスにきていた。
「君は幽助の修行は見ないのかい?」
「無理無理。俺は師範のように面倒見が良くないからな。
それに如何せん手加減ができん。」
この前半殺し以上にしてしまった。と力なく笑っていた。
「君も大変なんですね...。」
「ねぇねぇ、あれって南野君じゃない?」
「あれ?ほんとだ!同じ席にいる人は誰だろう?
弟君かな?」
「え!南野君って弟いたの?!」
「...。」
「もしかして、あれが"クラスの女の子"?」
「場所変えましょうか...。」
「蔵馬も大変だな。」
今度は蔵馬がゲッソリしていた。
そして結局落ち着いたのは、あの小さな図書館。
相変わらず人気(ひとけ)がない。
「久しぶりに来たけど、ここも全然変わらないな...。」
と言って蔵馬はいつもの場所に座る。
窓の外を見ると、紅葉もすっかり終わり、ひらりひらりと葉が落ちていた。
「もう冬か...。」
―――なまえ!見て見て雪だよ!雪合戦しようよ!
まだ降ったばかりだから出来ないよ...
じゃあ、積もったら3人で雪合戦しようね!約束!――――――
「...!..なまえ!」
蔵馬の声にはっとする。
「大丈夫?顔色も悪いみたいだけど...。」
「...大丈夫。ちょっと修行で疲れが溜まってるだけだ。」
「ならいいけど...。
あ、そうそう今度家に来なよ。母さんが待ってるよ。」
もちろん、俺も来てほしいしね。
と言って微笑む蔵馬。
「...ありがとう。」
暫くして蔵馬と別れ、家路につく。
今まで一度も考えないようにしてたのに、何で今頃思い出したんだろう...
ヒュっと吹く風に、冬の匂いがした。
また一難 fin. 2013.7.15
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