一難去って...
とある休日、森での修練を終え幻海宅に戻ってくると何やら表が騒がしい。
それにもかかわらず、師範はいつものように茶を啜っている。
「...師範、何事です?」
「おや、言っとらんかったかね。
今日は霊光波動拳継承者の選考会じゃよ。」
「...聞いてません。」
「まあいいわい。お主もちょいと手伝っとくれ。」
そう言って師範は部屋を出て行った。
その頃幽助は多勢に混じり、この選考会に参加していた。
乱童という妖怪から霊光波動拳の奥義を守るために...
そしてその会場に偶然にも居合わせた桑原とその時を待っていた。
「静粛に!幻海師範がお見えになられるぞ!」
そんな声が響き、幻海が襖を開けて現れる。
「あのバアサンが幻海?」
なんかイマイチ信用できねーな...
と疑いの眼差しを向ける。
「おやおや。よくまあ集まったもんだね。それじゃ早速審査を始めようかね。
...第一審査は...!!」
すると会場が皆固唾を飲んで師範の次の言葉を待つ。
「クジ引きじゃ。」
その言葉に全員が拍子抜けし、会場全体にざわめきが広がる。
「なまえ!例の物を持ってきとくれ!」
すると襖から、大きなカメを持ったなまえが現れる。
「え...なまえ?!」
「なんだ浦飯、知り合いか。」
「あ、ああ...。でもまさかこんなとこにいたなんて...。」
そんな会話をしていると、一人の男が声をあげる。
「幻海師範!そこにいらっしゃるのは、妖魔退治で有名な"血の瞳"のなまえさんでしょう?!
なぜその方に奥義を継承しないのです?!」
その言葉に会場のあちらこちらからどよめきが発せられる。
「"血の瞳"?確かに目が赤いが...おい、浦飯どういうことだ。」
「俺も知らねぇよ。俺と会ったときはあんな瞳の色してなかったし...あいつ、あんな有名だったんか。」
「...ごほんっ。
確かにお前さんの言う通りじゃ。なまえには奥義を継承するだけの力量がある。
だが、こやつにはそんなもんは必要ないんじゃよ。」
わかったらとっととクジを引きな。
その言葉に素直従い、順番にクジを引いていく。
「おい、なまえ。おめぇ只者じゃないと思ってたらここの門下生だったのか。」
と、幽助がクジを引きながら話しかける。
「門下生じゃない、ただの居候だ。引いたら後ろに回れ。」
「へいへい。」
そして暫くして全員にクジがいき渡る。
幻海の合図で一斉に封が切られる。
「「...当たっちまった!」」
幽助と桑原の声が重なる。
「当たったやつはついといで。
はずれたモンはとっとと帰りな。」
その言葉に異議を申し立てる男たちが幻海の前に立ちはだかる。
「ワシらは九州では名の知れた霊能力者なのだぞ!!
わざわざ足を運んでやったのに、クジ引きとはどういう事だ!!」
返答次第ではいかに師範でも許さんぞ!!
と男たちはがなりまくる。
耳障りな声だ。少し黙らすか...
そう思い構えると、師範が目線で制する。
「耳元でピーチクやかましいね小便たれどもが。
霊能力者だって?インチキ芸人が笑わせんじゃないよ。」
さっさと家帰ってクソして寝てな。
その幻海の言葉に逆上し、大男2人が殴りかかる。
「喝!!!!」
体格差で幻海が不利かと思われたが、たったその一声で、男どもは吹き飛んだ。
「はぁ、年にゃ勝てないね。あたしの霊波動もなまったもんだ。」
そして幻海はスタスタと歩いていく。
「二次審査に残ったやつはついてこい。」
そう言葉を残し、なまえも幻海の隣を歩く。
「...師範、妖怪が混じってますがいいんですか?」
「かまわん、放っておけ。」
「...。」
幽助がいるということは、霊界の任務で来ているんだろう。
おそらく、ここに混じっている妖怪が絡んでいる...
面倒なことにならないといいが...
そんななまえの杞憂とは別に、審査は進んでいく。
そして最終試験となる四次審査が始まろうとしていた。
一難去って... fin. 2013.7.15
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