役者は揃う
 





目的のものを買い、店を出る。

空はすっかり夕焼け空になっていた。



あとは帰るだけ...

そんなことを思っていると、強い妖気を感じた。




(こんな強い妖気は久しぶりだな...
そういえば、霊界の宝を一緒に盗んだ妖怪で一騒動起こしそうな奴がいると蔵馬が言っていたが、そいつか...?)



放っておくわけにもいかず、妖気がする方向へと歩き出した。






















――――――とある倉庫にて






「まさか...人間相手に"変身"するはめになるとはな。」




そう言うやいなや、額に眼をもつ妖怪...邪眼師・飛影はその姿を変えた。



「なにィ?!」

「きゃあ!!」




それに呼応するかのように、人質にとられた少女・雪村螢子の額につけられた
第3の目が開く速度が加速した。



(くう...!!
これ以上あたしの霊力じゃおさえきれない...!!)

螢子の妖化を鎮静させようとしているぼたんの手は
その強い妖気に傷ついていく。



「螢子!!ぼたん!!」

「くくく
もはや妖化が完了するのも時間の問題だな。
だがしかし!!人の心配をするヒマはないぞ!!」


飛影の妖気がまた一段上がり、幽助はその邪眼の呪縛獄によって縛られ、身動きがとれなくなる。



「くっ...妖気が強すぎる!幽助、早く飛影を...っ」

「代われ。」

「...!
あんたは?!」

「時間がない。それにあなたもこれ以上は危険だ。」


そう言い、なまえは手に霊力を集中させ螢子の額に手をかざす。


すると開きかけていた目が再び閉じていく。




(このすさまじい妖気を鎮静化させた...!)

「あんた、ほんとに一体何者なんだい...?」



その問いには答えず、なまえは術を施すのに集中した。








「っ!新手か!...それにこの強力な霊気...
まぁいい...先にきさまからひと思いに殺してやる...!」


(くそ...体さえ自由になれば...!!)


「死ね――――――――!!!」




だめか!



幽助が諦めたその時、





ドス!!





「な!なにぃ!!」





目の前に立ちはだかるのは、盟王高校の制服を着た蔵馬。
蔵馬はその身を呈して剣から幽助を守ったのだった。


「く、蔵馬!?どういうことだ!?」


その問いには答えず、蔵馬は自らの血を飛影の目にめがけて飛ばす。


「!!呪縛が解けた!」

「飛影の邪眼はいわば増幅装置のようなもの。
こないだの借りを返しに来た...あとは任せてくれ。」

(と言っても、俺がすることはほとんどないだろうけど...。)


そう思いながら、螢子のもとへと行く。




「す、すごい...。ほとんど目が消えかかってる。」

ぼたんはそう感心するが、なまえは気が気じゃなかった。



今、最も会いたくない人物の気配が着実に近づいてくる。



そして、案の定その人物が現れる。

...腹に剣を刺したまま。




「蔵馬!あんた凄い怪我をしてるじゃないか!」

「大丈夫、俺も妖怪のはしくれだからね...。
それよりも、この剣の柄の中にある薬をその女の子に...。」

そう言い、剣を抜きなまえに渡す。


渡されたなまえは柄から薬を抜き取り、さらにそれをぼたんに渡す。




「え?あたしかい?」

「...患者が増えたんでな。」


そう言い蔵馬の腹へ手をかざし、霊気を送る。



「俺は大丈夫だ。それよりも幽助を助けてやってくれ。
飛影にかなり手こずってるはずだ。」

「向こうは大丈夫だろう...その幽助とやらの霊気が上がっている。
それとも、俺に厄介になるのが嫌か?」


そんな会話をしているうちに、止血が終わり少しずつ傷口がふさがっていく。


「...何を言っている?」



なまえの言葉に蔵馬は眉間を寄せた。










役者は揃う fin. 2013.7.14



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