秋空に憂鬱
 







家に着き、今までの緊張が解けたのかどっと疲労感と安堵感が押し寄せソファに沈み込む。






...らしくない


蔵馬はそう思い、ふっと自嘲的な笑みがこぼれた。





彼女が暗黒鏡へ命を差し出して、俺を生き返らせようとしているのを聞いた時、足元をすくわれた感覚に陥った。


俺が暗黒鏡の話しをしたときに何も反論してこなかったのは

俺の気持ちを汲み取ってくれたわけではなく、最初からこういうつもりだったのかと。


そう考えると、何だかなまえにまんまと嵌められた気分になった。




そしてもう1つ、彼女が死んでしまうと思うと胸が酷く痛んだ。


こんな風になまえを巻き込みたかったわけじゃないのに...



そんな色んな感情が入り乱れ、コントロールしきれなかったんだろう


なまえの他人のために死ねるなら本望、という言葉に
自分の中でぷつりと何かが切れた。






嫌いだ なんて...







今冷静に考えると大人げなかったと思う。



何千という長い時間を生きてきたのに、たった数十年しか生きていない娘に感情的になるなんて...



「俺もまだまだだな...。」






























次の日、なまえは幻海との修行を終えた後
御堂で座禅を組んでいた。





蔵馬の言い分はわかる。

でもなぜあそこまで不快感を露わにしたのかが理解できなかった。



そんなことをぐるぐると考えていると、ある結論に至った。




恐らく志保利さんの件に関して介入しすぎたのだ。
大方、余計なお世話といったところだったんだろう。




その結論にひどく納得した。
が、同時にチクリと胸を針で刺されたように感じた。


ごろんとそのまま後ろ背に寝転がる。

すると俺を見下ろすかたちで師範が立っていた。



「...いつからいらっしゃいました?」

「ついさっきじゃよ。
珍しく座禅をしていたと思えば雑念の塊じゃないか。」

やれやれ、と言ってため息をつく。



「...すんません。」

と言うと、本当に呆れた顔をされた。





「だったら茶を買ってきとくれ。丁度葉が切れたんでな。」

そう言って師範は御堂を出ていく。






街へ行くのはあまり気が進まないな...
今行けば、なんとなく蔵馬にばったり会う気がする。




...考えすぎか。




そう思い街に行く準備を始めるために起き上がった。



今日もきれいな秋空だ。










秋空に憂鬱 fin. 2013.7.14



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