似て相容れないもの
 



幽助と別れたあと、志保利さんの様子を見に行くことにした。




病室をそっと覗くと、そこには蔵馬と畑中さん(両思いの男性)に囲まれ笑顔の志保利の姿があった。







良かった...


その姿に安堵する。






すると志保利がなまえに気付き、部屋に招き入れる。




「心配かけてごめんね。
一時はどうなるかと思ったけど、もう大丈夫みたい。」


不思議よね、急に元気になったのよ。


そう言いながら微笑む。



「なまえちゃんが毎日お見舞いにきてくれたおかげね。ありがとう。」

「いえ、俺は別に何も...。」

「...俺からも礼を言うよ。
本当に、ありがとう...。」


そう言い頭を下げる蔵馬。




改めて礼を言われ、なんとなく落ち着かなくなる。



「...じゃあ、俺はそろそろ...。」


そう言い、席を立つ。




「こんな遅くにありがとうね。
そうそう、今度お家に遊びにいらっしゃい。
今までのお礼も兼ねて、ごちそうするわ。」


それに、秀一も喜ぶしね。


その一言にいつものように
母さん!と口を挟む蔵馬。


そんな様子を見て、思わず笑みがこぼれる。




「...ありがとうございます。
では、失礼します。」



そう言って病室を出た。



















「ふぅー...。」

一気に肩の荷が下りた気分になり、思わず吐息がでる。


薬草も一通り扱い方を学んだし、志保利さんの病も治った。
明日からどうしようかな...



そんなことを考えながら歩いていると僅かに殺気を感じた。






「蔵馬...?」


するとビルの影から予想通り、蔵馬が現れる。




「...やっぱりばれちゃいましたか。」

「志保利さんのところにいなくていいのか?」

「畑中さんがついているからね。俺も今日は家に帰るよ。」


表情や声のトーンはいつもと変わらないのに、やっぱり感じる殺気。




殺気というよりも、怒気か。


蔵馬を怒らせている原因は、心当たりがなくもない。
あの探偵と同様、俺の声が聞こえていたんだろう。




「...何を怒ってる?」


と、探りを入れたのが余計に癇に障ったのか更に怒気が強くなった。



「...心当たりがあるのか?」

「......。」


何を言っても逆効果な気がして黙ることにした。




重い沈黙を守りながら2人並んで夜の道を歩く。









暫くすると隣から溜息が聞こえた。


「俺もあまり人のこと言えないけど、君もなかなか頑固だね。」

「...暗黒鏡で蔵馬を生き返らせる。
志保利さんの病を治してかつ、幸せな生活を送ってもらうためにはそれしか考えれなかった。」

「...。」

「志保利さんにとって、お前のいない生活なんて考えられないよ。」


たとえその先に、どんな幸せが約束されていても...




「だからって、赤の他人の為に自分の命を差し出すのか?」

「人助けして死ねるなら本望だろ。」






そう言った瞬間、蔵馬の空気が変わった。


「あの時っ...
意識が朦朧としてる中、君が暗黒鏡へ望みを言ったのを聞いたとき

俺がどんな気持ちになったか知らないだろ!」



こんな声を荒げる蔵馬を見るのは初めてで、呆気にとられるが


その言葉に納得できなかった。




「...蔵馬こそ、わかってないだろ。

暗黒鏡の話しをお前から聞いたとき、その鏡をいっそ壊してやろうかと思ったよ。」





親は子より先に逝くのが自然の摂理だ。

なのになんでその自然の流れに逆い命を差し出してまで、助けようとするのか理解ができなかった。





「...蔵馬の
他人のためになら、自己犠牲も厭わない...そんな性格が嫌いだ。」


「...奇遇ですね。
俺も君の自己犠牲を厭わない性格が嫌いだ。」



そう言い、お互い睨み合う。







「「.........。」」





このままいても拉致があかないので、ふいっと顔を逸らし歩を進める。





そんななまえの後姿を静かに見つめ、蔵馬も帰路へと歩み出した。









似て相容れないもの fin. 2013.7.13



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