ジ・エンド
 




それから3日後…


「う、浦飯くん。校門で呼んでる人がいるんだけど...」



幽助はその呼び出しに意気揚々と足を向けるが
校門にいたのは蔵馬だった。




「やぁ、今日が宝を返す約束の日だろ。」

蔵馬にそう言われ、自分の任務を思い出す。


「実はその前に合わせたい人がいるんだ...。」














「あら...珍しいわね、お友達を連れてくるなんて。」

「いいよ母さん、横になってて。りんごでも剥こうか?」

「いいわ、なんだか食欲ないから...
そういえば今日はまだ、なまえちゃん来てないのよ...」






(一体どーゆーことだ?こりゃ)




幽助はわけがわからなかった。
















「秀一っていうのは、人間界での俺の仮の名前さ。」


自分の正体が妖孤で、ハンターに追われ
志保利の本当の子供になるはずだった受精体に憑依したこと...

屋上にて、蔵馬は幽助に真実を話す。



「なんでまた俺にそんな話しを...?」

「誰かに懺悔を聞いて欲しかったってやつかな...
それに君も俺を信用してくれたしね…。」


蔵馬にそう告げられ調子が狂う幽助だったが







「蔵馬!!志保利さんが...!」


尋常じゃないなまえの様子に、嫌な予感がして急いで志保利の元へと戻る。




















「...容体が急変して...。
今夜が峠です...。」


医者からそう告げられる。

(...蔵馬...。)












「...やるしかないな。」

「鏡を使うのか?!
その鏡で願いをかなえるためには、あるものを捧げなきゃだめって聞いたぜ。

それがなにかは知っているのか?」



「...ああ。





              命さ。」




「!」

「...。」

「願いがかなうと同時に命を奪われてしまう魔の鏡。」

持ち主が転々と変わる由縁さ。


そう幽助に説明する蔵馬。




「暗黒鏡よ 月の光を受け 目覚めたまえ

その面に 我が望みを映し出し 力を示したまえ」




その蔵馬の言葉に反応し、暗黒鏡が光りだす。





「...この女の幸福な人生...それがお前の望みか...」




そうだ、と一言答える。



「おい!お前間違ってねーか?!
彼女が助かったってお前が死んだらなんにもなんねーじゃねーか!!

それにお前も!事情を知ってるなら何で止めなかった?!」





この霊界探偵が言うことは正論だ。

そう思い、なまえは何も返さなかった。




「なまえは何も悪くないよ。
これが俺の望みなんだから...」

「蔵馬...。」

「15年間彼女を騙し続けた罪が、これで少しでも償えるなら...」



そして、暗黒鏡からの最後の忠告があった後
蔵馬は暗黒鏡からの光に包まれた。




(大丈夫、お前も志保利さんも死なせやしない...)

なまえがそんなことを考えていると、その光に幽助が加わる。



「!」

「な、何をする?!」

「おい鏡!!俺の命を少し分けてやる!!
そうすればこいつの命全部とらなくても願いはかなうだろ!!」

「そんな...そんな都合の良い話しがあるわけないだろ!
馬鹿なことはよせ!」



幽助の予想外の行動に、さすがに口を挟む




「んなもん、やってみなきゃ分かんねーだろ!
...それに、母親が自分のことで泣いてんの見たことあっか?!」

あんなにバツのワリーもんはねえぜ...



その言葉を最後に二人は強い光に包まれた。















「...蔵馬...。」


呼びかけても反応がない。

なまえは暗黒鏡を手に取り、月の明かりを映す





「...暗黒鏡よ 月の光を受け 再び目覚めたまえ

その面に 我が望みを映し出し 力を示したまえ」



先ほど蔵馬が唱えたものと同じものを唱える。
すると、鏡が再び光だす。



「...この2人の命を再び呼び起こすこと。
それがお前の望みだな?」

「そうだ」





これでいい...
この探偵を巻き込んでしまったのは予想外だったが、計画通りだ。



「お前も他人のために自らの命を犠牲にするというんだな」

「ああ、そうだ。
二人を生き返らせてくれ。それ以外に望みはない。」










「それは無理だ...」



「え...?」




まさか、願いをかなえるのは一夜に一度だけなのか...?!






「...じゃあ...」


蔵馬は、本当に死んでしまった...?


そう思った瞬間、体中の血液が抜けたような感覚になった。
































「...生きた人間を生き返らせることはできん」






.........





「嘘だと思うなら、確かめればいい...。」



そう言われ、蔵馬の胸に耳をあててみる



その規則正しい音に、全身の力が抜けぺたりと座りこむ。






「...どうして...?」

「そこの坊主に礼を言うんだな。」



そう言い、暗黒鏡は再び闇を映した。



「...。」




「...う...」


「くらま...」


「...生きている?」


「ああ、生きてるよ...。
早く志保利さんのところに...」


「そうだ...母さん!」



どうやら、どこも異常がないようだ。
そう安堵したが


「そういえば、探偵は...」

「う...いてて。
おお、よかった生きてた。」


倒れた時に打ったんだろう、鼻を押さえながら起き上がる。



「...お前このことを知っていて?」

「いや、全然。
いかんなー、ああいう場面だとつい後先考えず動いちまう。」

今思うとかなりぞっとするな。


そう言いながら心臓の上を押さえる。




他人のために、何も考えずに命を差し出せるなんて...



「...とんだ阿呆だな。」

「ああ?!命の恩人にそんなこと言うかあ?!」

「...そうだな。
礼を言う、ありがとう...。」

そう言い、頭を下げる。



「...そんなのいい、いい!
なんか調子狂うぜ。」


そう言いながら、暗黒鏡を拾う。



「そういえば、お前も行かなくていいのか?
あいつのおふくろさんのところに。」

「いいんだ、親子水入らずの時間を邪魔したくないからな。」

「...そうかい。
それにしても、お前も無茶なこと考えるもんだな。」

「え?」

「聞こえてたぜ、お前が鏡に願いを言ってたの。」

「...。」


その瞬間、なぜか再び体中の血液が抜けたような気がした。






ジ・エンド fin. 2013.7.11



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