名残りの月に
 





「やれやれ たった1コ取り戻すのにこのザマだ。
あとふたつ...先が思いやられるぜ。」



幽助は剛鬼との戦いの末、餓鬼玉を取り返し
ボロボロになりながら夜の街を歩いていた。




ピピピピピピ...



(妖気計に反応が?!今はとても戦える状態じゃねえぞ!)



警戒しながら辺りを見回すと、そこに蔵馬の姿が。
身構えるも蔵馬から意外な話しを持ちかけられる。





















「あたしは罠だと思うけどね。話しが出来すぎているよ。」

3日たったら間違いなく宝を返すなんてさ...



と霊界伝言板、探偵助手のぼたんはこぼす。



「...あいつの目、嘘ついてる感じじゃなかった...勘だけど。」


そんな真剣な話しをしている折、ご飯よー。という母親らしき声が。

ひとまずその話しは中断になったようだ。




そんな幽助たちの様子を蔵馬はビルの屋上から見ていた。




「あれが霊界の追跡者か?」

「...驚いた、いつからいたんです?」


そう後ろを振り返ると、最初に会ったころのように全身黒で身を包んだなまえが佇んていた。



「ついさっき。
...見たところ、あの追跡者は無害みたいだな。」

「ええ...彼も俺のことを信じてくれましたよ。
君のようにね。」

そう言うと、なまえはじっと俺の目を見る。









こうして話すのも残り3日か...
たった半年だったがとても楽しい時間を過ごしたように思う。

名残り惜しい、とはこのことなんだろうな...


そんなことをぼんやりと考えながら、月を眺める。





「...やっぱり、俺はその色の瞳が好きだな。」

その声に蔵馬の方へと視線を戻す。


「ガーネット...またの名を柘榴石。
友愛、真実、忠実...そんな石言葉のある宝石にそっくりな色をしている。」


そう言いながら頬を手で包みこまれ、必然的に顔を上げる形になる。



「君の瞳は、まさにそんな宝石の様ですよ。」

あと3日で見れなくなるなんて、名残惜しいな...


そうこぼしながら、柔らかく微笑む蔵馬の翡翠色の瞳から目を逸らせなかった。









そんなことを言われたら、きっと後悔しか残らない。



満ちていく月を、恨めしく思った。









名残の月に fin. 2013.7.10



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