ルナに踊らされる
 



自宅に着き、自分の部屋に行く。



この真っ暗な家も慣れたな、なんて思いながら
暗黒鏡を手に取り眺め、月明かりに鏡を反射させてみる。



なまえに全て話した。この暗黒鏡を手に入れた経緯も全て。


呆れるか、はたまた怒るかすると思っていたのに
その予想は見事に外れた。


(いや、彼女が怒ることはないか…。)

この半年、彼女が感情的になった姿なんて見たことがない。

どちらにしろ止められると思っていたのに…













――――霊界からの追跡者やもう2匹の妖怪に襲撃される可能性も高い、護衛してやる


ちゃんと見とくよ、最後まで――――――








そう言われた。



予想外の言葉に驚くしかなかった。



母さんを助けるために犠牲になろうとしている俺を否定するわけではなく

俺の想いをちゃんと汲み取ってくれた。




それが無性に嬉しいのと同時に
なぜか決心が揺らぎそうになった。

まさか自分は、彼女に引き止めて欲しかったとでも言うのか。

それは違う、俺は母さんを助けたい。

本当は生まれるはずだった"南野秀一"という存在を消して、俺は延命してしまったのだから。

でも…たった半年だったが彼女と過ごした日々が、この先続くことはないことに、どこか引っかかりを覚える自分もいるのだ。


そんな心の中の矛盾を感じながらも俺は眠りについた。
























蔵馬から話しを聞いた時、解決策が思い浮かんだ。


暗黒鏡はどんな願いも叶えてくれる。
それも命さえ差し出せば人を選ばない。



ふと夜空を見上げれば、ほとんど満月に近い月が煌々と浮かんでいる。





「月見なんて珍しいじゃないか。」

「...もうすぐ満月ですね。」

「なんだい、月に帰るとでも言いだすんじゃないだろね。」


まさか、姫なんて柄じゃないですよ



そう言うと


「...だったら馬鹿なことは考えるんじゃないよ。
お前はあたしの葬式をあげるという大義があるじゃろ。」

そう言って寝室に入って行った。


師範には何でもお見通しらしい。
敵わないなぁ、なんて思いながらまた月を見る。









ルナに踊らされる fin.2013.7.10



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