この感覚を知っている
 





幽助が岩本に向けて霊丸を撃っているそのころ、
なまえはいつものように志保利の病室にいた。




「...クスクス...じゃあそのお師匠様に毎日ありがたい青痣をつけてもらっているのね?」

「まぁ...そうなんですけど...」


痣の理由を説明すると志保利さんは笑ってくれた。


たまに出来ている痣を見て、虐待でも受けているんじゃないかと常々心配してくれていたらしい。

でも聞くに聞けず、今まで触れないようにしていたと志保利さんは言う。



「...あの子も小さい時から生傷絶えなくてね。
どうしたらそんな怪我をするのか、誰かにいじめられてるんじゃないかって毎日心配だったわ。」


ほら、あの子他の子たちと距離を置くでしょ?

と、少し寂しそうな笑みを浮かべる。


「親の私にもどこか遠慮がちなところもあったし...
だから、こうしてなまえちゃんを紹介してくれたこと、本当に嬉しいのよ。


秀一のお友達になってくれてありがとうね。」





これからも、秀一のことよろしくね。





そう言って、優しく手を包みこまれた。









早くこの人の病気が治りますように



そう願ってぎゅっとその手を握り返した。























その頃、コエンマから任務を言い渡された幽助は蔵馬たちと接触していた。



(俺も今はまだ つかまるわけにはいかない)

そんな強い決意を抱き、蔵馬は幽助と戦うことを避け病院へと急ぐ。




満月の日に魔力を放つ暗黒鏡...
これがあれば必ず母さんを助けられる



俺の命と引き換えに...



それでいい、15年間彼女を騙してきた罪滅ぼしだ。



...こんなことを言えばなまえは呆れた顔をするだろうな。



そんなことを考えながら夕刻の街を歩いていく。















「...秀一、遅いわね。
いつもなら来てる時間なのに、何かあったのかしら...。」


心配そうに窓の外を見る志保利。



何かあった、というよりも何か起こしている。
なんとなくなまえはそう思った。


志保利さんを助ける手段が浮かんだのか、最近はどことなく表情がやわらかかった。


しかし、手段が浮かんだのなら何か一言あってもいいのにそれを言わないということは、あまり喜ばしい手段ではないのだろう。

そんなことを考えいていると、蔵馬が病室に入ってきた。


「秀一、遅いから心配したわよ。」

「ごめんごめん、ちょっと部活の部長に呼ばれて...。」

そうだったのね、と納得する志保利。



(蔵馬、何をする気だ...?)



そんな意を込めて蔵馬を見ると
視線に気づき、困った笑顔を向けてきた。


「大丈夫ですよ、別にクラスの女の子に呼び止められたとかじゃないですから。」

「いや、そういうことじゃなくて...。」

「まぁ、秀一ったら人気者なのね。」

と、くすくすと笑う志保利。



からかわれた気分になったが、恐らく話したくないことがあるんだろう。

それ以上追及しないことにした。


「じゃぁそろそろお暇(おいとま)させてもらいます。」

「もうこんな時間...遅くまでごめんね。」

また明日...


その言葉に頭を下げ、俺は病室を出た。

















「なまえ。」


病院を出ると後ろから蔵馬に呼び止められた。



「...ちょっと話が。」

「別にクラスの女の子に呼び止められたことは気にしてないぞ。」

「いや、そういうことじゃなくて...。
すみません、悪ふざけが過ぎましたね。」

と困った笑みを浮かべる。




「...良い方法でも見つかったのか?」

「ここじゃなんだから、場所を変えましょう。」

そう言い近くの公園に移動すし、ベンチに腰掛ける。







なんだか前にもこんなことがあったな...
そんなことを考えていると



「なんだか前にもこんなことがありましたね。」

と、今しがた考えていたことが隣りから聞こえてきた。

それに少し驚いていると



あれ?もしかして同じこと考えてました?


とおどけたように蔵馬が話す。


「...。」

「...。
母さんを助ける方法が見つかりました。」

「それで?」

「え?」

「それで、蔵馬はどうなるんだ?」



そう聞くと押し黙る蔵馬。
やっぱりそんな都合のいい話しはないようだ。















「...俺は死ぬ、って言ったらどうします?」






















ほら、やっぱりそんな都合のいい話しはないじゃないか






この感覚を知っている fin. 2013.7.9



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