結局考えるのは君のこと
 



その翌日、一通り修行を終え師範に昨日の件を聞くことにした。



「師範、聞きたいことがあるんですが。」

「なんじゃ珍しい。
今日は"先生"のところには行かんのか?」

と、お茶を啜りながらも話しは聞いてくれるみたいだ。



「...余命1ヶ月の人間の病気を治すことはできますか?」

「...それまた唐突じゃな。
なんだい、先生とやらが病気にかかったのか?」

「いえ、先生の母親が...。」

そう言うと師範はずずっと茶を啜る。



「お前は霊波動を勘違いしておるんじゃないか?
確かに霊波動で怪我人病人を治せるが、それは手助けに過ぎん。

あとは、その人間そのものの生命エネルギーに左右される。」

何でもかんでも治せるわけじゃないんだよ。


そう言われた瞬間、蔵馬の顔が思い浮かんだ。



「...延命はできるんですね?」


「気休めだがな。
しかしなまえよ、人は時の流れに逆らえん。

病に伏して人生をとじるのもその人の運命。
受け入れることも大事なんじゃぞ。」



親が子より先に逝くのも自然のさだめ、
抗うことなんてできんよ。


そう諭される。



「...もし、その人にまだこれからの人生が約束されているのなら...。」

なんとかしてやりたいと思う俺は、まだまだ未熟なのか。



「それは、お前さんが決めな。
あたしの話しを聞いて、見守るのもよし。手助けしてやるのもまたよし。


何が正しい選択かなんてありはせんよ。」



そう言ってまたずずっと茶を啜る。




いつもそうなのだ。
こうして諭すのに、結局は最後の決断は自分に委ねる。


でもそれがこの人のいいところだ。



「ありがとうございます。」

そう礼を言い、立ち上がる。



「どういう結果であれ、お前が気に病むことはないんだからね。」


その言葉を背に、今日もまたあの場所へ向かう。

あらゆる手を尽くそう、そう心に決めて。









結局考えるのは君のこと  fin.2013.7.7



前へ 次へ

[ 10/88 ]

[back]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -