チャイムに焦がれ
それから一週間が過ぎ
図書館で待ち合わせ、裏の山で薬草の採取から調合をするのが二人の日課になっていた。
蔵馬は授業を受けながらも、放課後が待ち遠しかった。
なまえはなかなか筋が良く、教えがいがあった。
(薬草の種類を匂いや味覚で覚えるのには驚いたけど…
トリカブトとヨモギの違いを味覚で確認しようとしたときは流石に止めた。)
ドクダミの匂いを嗅いだときは余程刺激が強かったのか
クシャミが止まらなかった。
そんな姿を見て、何だか犬みたいですね、と冗談混じりに言うと
「...そうか。」
と歯切れの悪い返事が返ってきた。
それ以上は踏み込んではいけない気がして、その話しは終わった。
5限目の授業が終わってすぐ、荷物を片付けて帰宅の準備をしていると
「南野君、今日も帰っちゃうの?」
と、同じ生物学部の同学年の女の子が聞いてきた。
「あぁ、人と約束してるからね。
部長には当分行けないとは言ってるんだけど…」
「そうなんだ…。」
こんなやり取りをして蔵馬は颯爽と教室を後にする。
「…彼女かな?」
「まぁ、いない方がおかしいよね〜。」
「ショック〜。でもどんな人か気になるなぁ。」
なんていう会話をクラスの女の子たちがしていたのを蔵馬は知らない。
チャイムに焦がれ fin. 2013.7.5
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