長い糸
 


*ご都合主義でうちはと木の葉の確執が丸く収まった設定です














どっ、どっ、どっ、と
私の心臓は忙しなく動き、血液が普段以上に身体を巡るから体温が上昇する。

それを悟られまいと、静かに深呼吸を繰り返す。



「何もないよ。」

そう、カラカラの口を上手く使い答えれば
キラキラとした彼女たちの瞳は、驚きに見開かれる。


「えぇーー!嘘〜、逆に何もないのが不思議なくらいなんですけど!」

「またまたどうせなまえさんのことだから、私達に隠してるだけでしょ?」


甘い甘い目の前のケーキをその柔らかな口に入れながら、驚きの次は彼女たちは疑いの眼差しを向けてくる。

ちょっとした拷問だ。
彼女達につかまった時から嫌な予感はしていたが、予感的中だ帰りたい。


甘ったるい空間から少しでも抜け出したくて、頼んでいたブラックコーヒーに口をつける。



「てっきりずっと前から付き合ってたと思ってたのに〜。





なまえさんとイタチさん。」



ムッと唇を尖らしそう話すイノちゃんと
依然として疑いの眼差しを向けてくるサクラちゃん。


真実を伝えただけなのに、何故こんな批判をされねばならないのか。
結局彼女達の不満を聞くだけ聞いて、この度の拷問…もとい女子会からは何とか解放された。












「どうした、口に合わないか。」


もくもくと、頼んだみたらし団子を食すイタチさんの手元を見ていると、そう声をかけられた。

あの日以降、イタチさんと一緒にいると時たま他人の視線を感じるのは気のせいじゃない気がする。
というより、今までも見られていたのだろうが、恐らく二人きりというシチュエーションを意識していなかったから気が付かなかったのだ。

あのうちは一族の、しかも天才で美男子ときた。
それでいて寡黙でとっつきにくい印象のあるうちはイタチが女と二人で甘味屋にいる。


目立たないはずがない。



と、一人悶々と考えながらイタチさんの手元を見ていたので、みたらし団子を食べない私に気を遣ったのか、イタチさんがメニューを寄越してくるので大丈夫です。とみたらし団子に手を伸ばす。

一口食べると、甘みが広がるがしつこくはない。
それに美味しいですよ、と感想を言うと
そうか。と満足したのかイタチさんは2本目に手を伸ばす。


こんな付き合いを10年程はしているのだ。
今更何かを変えるタイミングも、理由も思いつかない。
それでも彼女たちに言われて以来、喉につっかかって仕方がない。



不意に店の外に目を向けると、たまたま前を通った男女連れ。
仲睦まじく所謂恋人つなぎをしているその姿を見て、何の考えなしにイタチさんを呼ぶ。

勿論イタチさんはこちらに目を向けるのだが、自分が問おうとした事を冷静に考え、寸でのところで言葉にせずに済んだ。

間があるかないかのほんの少しの沈黙。
それを目敏くイタチさんは気付き、私の視線の先を見る。



あぁ、まずい。



「…後で目の前の店見てもいいですか。」


苦肉の策で出した言葉。
だがしかし、目の前の店は髪飾り屋だ。

馬鹿野郎、もう少し他に何かあったんじゃないかと自分に毒突くが、言葉に出してしまったのは仕方がない。




「あぁ、ちょうど良かった。」


え、と思わぬ返しにイタチさんを見る。



「贈り物ですか?」

「あぁ、今思いついた。」


と、サラリと言ってのけるイタチさんの言葉に頭から血の気が引く。

一体誰に、と聞きたいはずなのに
それよりも贈りたい誰かがいるという事実に目眩がする。

どうしよう、口の中が渇いてみたらし団子をこれ以上食べる気にならない。

帰りたい、物凄く帰りたい。
こんな事になるなら下手に言い訳しなければ良かった。

いつまでも自分の皿のみたらし団子に手をつけない私に、食べないのか?とイタチさんが聞いてきた。

食べますか?と言えば、私の皿から食べかけのみたらし団子を受け取りもくもくと食べる。

そんな行動に急にうちはイタチという男がわからなくなる。
何だろう、私のことは妹くらいにしか思っていないのだろうか。


そもそもだ。
贈り物をしたい人がいるならその人と甘味屋に来るべきじゃないのか。

私と二人でいると変な勘違いをされてしまうし、私だって変な勘違いをしてしまう(既に両者ともしてしまってるのだけども)。


その後、口からのデマカセ通り向かいの店に二人で寄る。

あぁ私は何をしてるのだろうと胃をキリキリさせながら店内を見るが、流し見するだけで商品が頭に入ってこない。

イタチさんに、どれがいいかと聞かれたが
イタチさんの選んだものなら何でもいいんじゃないですか。

と、心ここに在らずながらも何とか会話は成立させる。
たった一言で、こんなに心を乱すなんて忍失格だ。


あー早く店を出たい、帰りたい。
そんなことを考えていればいつの間にかイタチさんが会計を済ませていたので、そそくさと店の外に出る。

どんなものを買ったのか気にはなったが、
品物を見ればどんな女(ひと)に贈るのか想像してしまうし、それを身に付けてる人にバッタリ出くわしてしまった日には絶対にイタチさんと目を合わせられなくなる。


「もう、いいのか?」

「はい、十分見れたので。」


普通に答えたつもりだが、何だかイタチさんの視線が痛い。
お願い何も言わずにこのまま解散してくれ。


私は相変わらず暗部、イタチさんは上忍に職種が変わった為、このまま別れれば恐らく数ヶ月単位で会わないはずだ。


どちらとも崩さない沈黙。
今日は非番だったが、任務が入ったということにしようか…


「イタチさん…」

「今日、家に来てくれないか。」


話を切り出すタイミングが完全に被ったが、イタチさんの要件はハッキリ聞こえた。
その要件にぽかんとしていると、今日は予定があったかと聞いてきた。


いや、ないけど…
ないけど意中の人への贈り物を買った足で他の女を家に招くとは如何なものか。

イタチさんはそんなモラルのない男だと思えないので、私を女と認識ていないのか。

あぁ、どう切り返したものかと考えていると
イタチさんが先ほど買った贈り物に目線を向ける。

その贈り物は控え目にだがラッピングが施されている。
それを見て、やはりカラカラと口の中が渇いていく。


「予定は、ないですけど
贈り物、今日渡すんじゃないんですか?」

「あぁ、今日家で渡すつもりだ。」


イタチさんの回答に頭にハテナが大量に浮かぶ。
いえ?家で渡す?
それなら私は不要なんじゃないか??


そんな沢山の疑問は言葉に出せず、イタチさんを見る。
イタチさんは私が状況をわかっていないことを察して、苦笑しながら口を開く。
















「今日は母さんの誕生日なんだ。
一緒に祝ってやってくれないか?」
















「…すみません。
小物屋寄っていいですか。」



血の気の引いていた頭は今度は一気に血が巡る。
熱い、顔が、身体が熱い。


お前が居てくれるだけで充分喜んでくれるんだが。
と、イタチさんは言ってくれたがそんな訳にもいかない。

というか、ある意味家に帰りたい。
勘違いをして一人劇場を繰り広げていた自分が恥ずかしい。誰かに殴ってほしい。


それ以降、イタチさんと一緒にいると益々居心地が悪くなったのは言うまでもなく

小物屋に行った先でバッタリサクラちゃん達に会い、再度拷問を受けるなど災難は続いた。





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あとがき

ごめんなさい。
当社比でかなり緩くは書けましたが甘くはならなかったです。
イチャイチャチュッチュキャピキャピラブラブを聴きながら書いたのですがこれが限界でした…
甘々な話書ける他サイト様凄く尊敬します…

この主人公とイタチさん、あの惨劇がなければお付き合いとかいう概念はなく、所謂幼馴染期間がものすごく長そうだなと…


というかイタチさん、本当プライベート難しい。
ただ、イタチさんは鈍感じゃないけど任務外れると天然が入ってて、自分の言葉一つで相手が翻弄されてるなんて気付いてなさそう。
突然ストレート投げてきたりと、天然たらしのイメージはあります。

こんな感じで申し訳ありませんが、ここまで読んでいただきありがとうございます!!精進します!!!



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